2019年10月03日 12:09 公開

北朝鮮は3日、前日に日本海に向けて発射したのは、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だったと発表した。短距離ミサイルよりも射程距離が長いSLBMの発射は、2016年8月以来約3年ぶりで、事態は深刻化している。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は3日、元山湾水域で、新型のSLBM「北極星3」の発射実験を「高角発射方式」で行ったと、ミサイルの写真付きで報じた。

KCNAは、「北極星3」の発射実験の成功は、「外部勢力の脅威を抑止し、国の自衛的軍事力をより一層強化する上で新たな局面を開いた重大な成果」だと強調。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、関係者に対し「熱烈な祝賀を送った」というが、金委員長が現地指導をしたのかについては言及しなかった。

一方で、発射実験は「周辺国の安全にいささかの否定的影響も与えなかった」としている。

米政府と日本政府は、発射実験を非難した。

射程距離は千キロ以上と

韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は午前7時11分ごろ、元山(ウォンサン)港付近の海上からミサイルを発射。高度約910キロの高さで約450キロ飛行した後、日本海(韓国名・東海)に落下した。

北朝鮮による発射実験は、今年5月に短距離ミサイルが発射されて以降、今回で11回目。そのうち10回はいずれも短距離ミサイルだったが、今回発射されたSLBMは、射程距離千キロ以上ともいわれている。

非核化交渉で譲歩得るためか

北朝鮮はミサイル発射の数時間前に、アメリカとの非核化協議を4日にも再開すると発表していた。非核化協議は今年2月、ヴェトナム・ハノイでの、金委員長とドナルド・トランプ米大統領との2回目の会談が物別れに終わって以降停滞している。

専門家は、核計画をめぐり、アメリカと国連による厳しい制裁の対象となっている北朝鮮は、譲歩を得ようと意図的に、非核化協議再開の発表からわずか数時間後に発射実験を行ったと指摘した。

北朝鮮による弾道ミサイル発射は、国連安保理決議で禁止されている。

北朝鮮は、すべての長距離ミサイルの発射実験を中止する前までは、SLBMの技術開発を行っていた。


<解説>地域の安全保障における深刻な瞬間――アンキット・パンダ、北朝鮮アナリスト

北朝鮮によるSLBM「北極星3」の発表は、北東アジア地域の安全保障にとって深刻な瞬間だと言える。2年近く続いた見掛け倒しで中身のない外交によって、何が失われたのかを知らしめたのだ。

今回発射されたミサイルは潜水艦から発射されるタイプだが、実験では違った(韓国メディアは、海中に設置した発射台を使ったとみている)。北朝鮮の技術者は、運用可能な弾道ミサイル用潜水艦を実験で試すのは危険すぎると判断したのかもしれない。そうは言っても、ミサイルは見事に飛行を成功させたようだ。

「北極星3」が仮に通常の軌道で飛行していたら、日本海の中央から、韓国全土そして日本全土を射程におさめることができたかもしれない。

最も深刻なのは、このミサイルが北朝鮮で最も大型の固体燃料式ミサイルだということだ。固体燃料ミサイルは、液体燃料を用いたものよりも優れている。より高い反応性や柔軟性があるほか、液体燃料式のような大掛かりな燃料注入や事前準備は不要だ。

なぜアメリカが北朝鮮の核技術における質の向上を中断させるために、多大な努力をしなければならないのか。今回の発射実験はその理由をはっきりと示している。

アンキット・パンダ氏は、米国科学者連盟の全米科学者連盟(FAS)の非常勤シニア・フェロー。近々、著書「Kim Jong Un and the Bomb(金正恩と爆弾)」を出版予定。


<解説>ジョナサン・マーカス、防衛問題担当編集委員

今回、ここ数年の間で最長距離を射程におさめるミサイルの発射実験が行われた。通常よりも角度をつけて高く飛ばす「ロフテッド軌道」で発射されたSLBMは、高度は約910キロにまで達した。もし通常の軌道であれば、飛行距離は大幅に延びることとなる。専門家は、約1900キロに達する可能性があるとしている。

これによって、北朝鮮がSLBM開発において著しい進展を遂げていることが、明らかになった。SLBMは地上配備型に比べ、海中の潜水艦を発見したり追跡したりすることが難しく、より脅威的なミサイルだとされる。

アメリカと北朝鮮による非核化協議再開を目前に行われたSLBMの発射実験により、北朝鮮が強い立場で交渉に臨めると考えていることが分かった。そして、核開発における信頼できる制限を設けることができるのか、あらためて疑いが生じた。


(英語記事 N Korea confirms it fired missile from submarine