富坂聰(ジャーナリスト、拓殖大学海外事情研究所教授)

 中国経済に関する評価は、常に好悪の両極端に振れてきた。この現象は、インターネットを主な情報源として、現地を見ることもなく、また現地の人々と話すこともなく発信されるレポートがあふれて以降、さらに顕著となっている。

 中国経済の盛衰は常に変化してきた。当然のこと、日本の書店でよく見かける大混乱や大失速はもちろん、大崩壊といったことが予測されるような話題ではない。

 ここ数年、日本の新聞は四半期ごとの中国経済統計が発表されるたびに、「中国経済、減速が鮮明」との見出しをつけて報じてきた。

 確かに、中国自身が認めているように、「高速発展」の時代は2012年の時点で終わっている。その後は、「ニューノーマル(新常態)」という言葉が使われるようになったように、中国経済は量から質への転換のプロセスに入った。

 つまり、数字が下がることを織り込んだ上で「変革のプロセス」に入ったのである。ゆえに、その数字が良くないと批判するのは不思議な話だ。

 本来、中国経済の未来を判断するのであれば、まず「質的転換」の進捗(しんちょく)状況を分析すべきである。具体的には、第2次産業依存の体質から第3次産業中心へのシフトの状況であったり、製造業における高付加価値化の進展具合である。
株式市場「科創板」の取引開始を記念し、中国・上海で行われた式典=2019年7月22日(共同)
株式市場「科創板」の取引開始を記念し、中国・上海で行われた式典=2019年7月22日(共同)
 経済発展の牽引車から、いまや成長の足かせとなった重厚長大型産業を中心とした「オールドエコノミー」の体質改善が進んでいるか否かの見極めも必要だ。換言すれば、中国経済のダメージは、個人消費の不振やニューエコノミーの育成不良、はたまたオールドエコノミーのリストラが進まないといった状況から評価されるべきなのだ。