こうした中で、習政権は今後一体どうやって、国内外の難局を乗り越えて活路を見いだしていくのだろうか。それを占うのに示唆の富んだ動きの一つがあった。9月30日、建国70周年記念日の前日、習主席はなんと、最高指導部の面々を率いて、天安門広場にある「毛主席記念堂」を参拝したのである。

 鄧小平の時代以来、共産党最高指導部の人々が毛沢東の遺体を安置しているこの記念堂を参拝するのは普通、毛沢東誕辰(誕生日)100周年や110周年などの節目の記念日に限ったことであって、建国記念日に合わせて参拝した前例はない。

 習近平指導部による、上述のような前例破りの行動には当然、特別な政治的な意味合いが込められているはずだ。要するに習主席はこの行動をとることによって、自分と自分の政権は今後、まさに毛沢東路線へ回帰することによって内憂外患の難局を打破していく意志であることを内外に向かって宣言したわけである。

 人間が窮地に立たされた時には退嬰(たいえい)的な行動をとるのはよくあることだが、それと同様、今になって窮途(きゅうと)末路の習主席と習政権はどうやら、毛沢東時代への先祖返りで政権の自己防衛を図り、生きていく道を切り開こうとしているのである。

 こうしてみると、建国して70年がたっても、共産党政権は一向に変わることなく毛沢東時代以来の独裁軍事政権のままであることがよく分かるし、70年間にわたる中国共産党政権の歴史は結局、70年前の悪しき原点に立ち戻ることを最終の帰結としている。

 もちろん、毛沢東時代への回帰は中国自身と周辺国にとって何を意味するのかは明々白々である。習政権の下では中国という国は今後、国内的には思想統制と言論弾圧・民族弾圧がますます厳しくなって、経済が再び社会主義計画経済の統制下におかれて活力を失っていくのであろう。そして対外的には、今後の中国は武力と恫喝による台湾併合を進めていくだけでなく、周辺諸国に対してますます覇権主義的強硬外交を展開していき、習政権の中国はこれまで以上に、アジアと世界全体にとっての脅威になっていくのであろう。
会談に臨む中国の習近平国家主席と安倍首相=12日、ウラジオストク(代表撮影)詳細表示
会談に臨む中国の習近平国家主席と安倍首相=2018年9月12日、ウラジオストク(代表撮影)
 毛沢東時代に先祖返りしていく、この凶暴にして退嬰的な巨大帝国の脅威にどう対処していくのか。それこそが今後、日本を含めたアジア諸国が直面していく最大の安全保障上の難題であろう。