渡邉 いずれにせよ、中国とロシアは核心的な利益の部分で確実に対立するものがあります。それは「水」です。ロシアの水を中国は水源として狙っていると言われていて、ここに関してロシアと中国は絶対的に敵対することになります。

 吉川 私もワシントンにいたとき、ロシア大使館の関係者と話をすると、公の席ではなく、酒席では、中国からの不法移民がシベリアには多すぎると聞きましたね。このままだとシベリアを取られてしまいそうだと、相当警戒していますね。

 渡邉 そうですね。今は、習近平が打ち出した経済圏構想「一帯一路」がよく言われますが、新たな軍事的対立点になろうとしているのは、北極海です。北極海においてはロシアと中国は完全に対立しているわけです。中国がかなり北極に進出しており、これに対してアメリカもロシアも、中国は北極隣接国ではなく、開発権限はないと主張していますからね。

 吉川 北海道の土地も中国資本がかなり買い漁っています。中国の船が年中北極に行く海路を抑えるためではないかと聞いていますが、実際どうしようとしているのでしょうか。

 渡邉 それについては、ロシアと中国、アメリカの三つ巴(どもえ)の中でトランプはグリーンランドを買いたいと言っています。

 吉川 その通りです。私もそれを申し上げようと思っていたのです。

 渡邉 メキシコとアメリカの国境の壁の話もそうですが、グローバリズムというものは、カネの移動の自由化なのでしょうが、トランプが壁を作ると言って大統領選で勝利しましたが、これらはカネの間に壁を作っていくということだと思います。その壁の意味というのは、象徴的な意味合いの方が強いと思います。難民対策という面もありますが、例えばモノで言えば、中国に対する関税、すなわちそれが壁です。今、中国人にビザ規制をしていますが、これも壁と言えます。

 吉川 ですが、アメリカは中国を為替操作国指定はしたし、そろそろカネに関する壁作りも始めるということではないでしょうか。

 渡邉 為替操作国指定をして、そろそろ始めるというより、すでに始まっていますね。結局、トランプのビジネス、いわゆる口先介入というかツイッター介入というのはすごく分かりやすくて、規制のかけ方も分かりやすい。株価が最高値をつけたところで中国に対する再規制をツイッターで宣告することで、株価が下落する。そしてまた戻ると、再規制をかけるという具合です。それで足りない場合は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げなどで、さらに金融支援をさせるかたちで株価をうまくコントロールしながら、中国に制裁をかけているのです。要するに、株価連動政治ということです。
経済評論家の渡邉哲也氏=2019年9月、東京都千代田区
経済評論家の渡邉哲也氏=2019年9月、東京都千代田区(飯田英男撮影)
 吉川 トランプの減税で一度よくなったアメリカの景気が今年の第1四半期に3%成長だったのが、第2四半期には2%成長になり、来年には1%台になるかもしれません。失業率は下げ止まりしていますが、トランプを当選させた自動車工場などで働いている人の失業が実は30万人ぐらい出てしまっており、その辺がトランプの大統領再選に関して気にしているところです。

 ただ、トランプの政策をもってしても、なかなか中国に進出したアメリカ企業の工場などが、アメリカに戻ってこないので、そのためかもしれません。中国に進出したアメリカ企業の8割以上が「トランプ関税」の影響を感じていますが、今ある工場などを中国から撤退させることを予定している企業は1割ほどです。