吉川 為替操作国としてIMFに認められれば、中国大陸にある1200億ドルを引き上げてしまうこともできます。香港情勢が悪化すれば、1992年の特例法によって、香港にある800億ドルも引き上げることも可能です。すると中国は人民元をドルで買い支えることができなくなるので、人民元は40%前後大暴落するでしょう。いずれにしても80年代に日本に対してアメリカがやった同じことを中国に対してやっているということですね。

 渡邉 成功体験を持つ人がやっていますからね。日本のバブル崩壊のプロセスを追っかけていけば、どうやって内側に倒していくことができるかを知っている人たちがやっている。

 吉川 だからそういう意味で、全面核戦争にならないために、「戦わずして勝つ」というかたちで中国を弱めていければ一番ありがたいですがね。

 渡邉 こうした中で、さて日本はということになりますが、日本企業も必然的にアメリカか中国か、いずれかを選ばなければいけないのですが、当然、安全保障の問題もあって中国を選べない。特に親米でも何でもないけれど、アメリカを選択した上で、日本市場や世界中のマーケットに中国がシェアをとってきた商品があり、それが追い出されていくので、結果的にそこに枠ができるわけですよね。

 この枠は、よくよく考えればかつて日本企業が持っていたもの。ならば、取り返せばいいということですよ。14億人という中国の巨大市場がなくなる恐怖を語る人はいますが、先に述べたように、中国は14億人ではなく、実質的には1億5千万人ですから。しょせん日本と同じ規模しかないことを認識すれば、それほど怖いことでもないでしょう。

 吉川 たしかに自由貿易協定(FTA)の問題も含めて、日本企業は、トランプ政権の恩恵を受けることが期待できるわけで、5G(第5世代移動通信システム)もそうですが、アメリカと中国が全面戦争になるときのために宇宙軍を創設して新スターウォーズ構想もあって、こうした中から日本企業に商機があるではないかと思います。

 渡邉 そうですね。中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)が象徴的ですが、5年以内にアメリカ国内から中国製通信機を全面排除するということで、そのために協力業者を探して育成していくというアメリカの方針が出ましたから。それに合わせて日本の通信企業も今動いていています。コストの面でも、これまで中国で生産していたものを生産地移転などで対応できると言っていますからね。

 いずれは日米のFTAが結ばれると思いますが、アメリカはバイオ分野にしても最先端の技術を持っていますが、作る技術がない。でも、日本は作る技術と材料を持っています。だから日米がきちんと組めばウィンウィンで、非常によい関係が生まれ、今までとは違う経済効果をもたらすはずです。要は中国やヨーロッパがなくても、日米両国が手を組むことによって大きな変革を生み出すことができますよと、一連の日米協議で口説いたという話を聞いています。
ファーウェイ製品を扱う北京の店舗(UPI=共同)
ファーウェイ製品を扱う北京の店舗(UPI=共同)
 吉川 とにかく日米で5Gの先にある5・1Gや6Gを構築していけば、日米が世界を支配できるということですね。今アメリカは挙国一致で中国との対決姿勢に入っているわけですから、ここで日本はアメリカとのスクラムを崩すわけにはいきませんね。渡邊さんが先ほどおっしゃったように、変に中国の市場が巨大だとか、そういう幻想に惑わされはいけないということですね。

 わたなべ・てつや 経済評論家。昭和44年生まれ。日大法学部卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書に『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)など多数。近著に『「中国大崩壊」入門 何が起きているのか? これからどうなるか? どう対応すべきか?』(徳間書店)。

 よしかわ・けいいち 政策コンサルティング事務所「グローバル・イッシューズ総合研究所」代表。2016年まで米国ワシントンDCにも拠点を持ち、 東日本大震災を契機に一般社団法人日本安全保障・危機管理学会防災(JSSC)ワシントン事務所長として、日本に米国と同様の危機管理専門省庁の立ち上げを目指す政策提言活動に取り組む。2017年以降は日本国内をベースに、テロ対策や米国政治に関する政策提言活動を続ける。著書に『救世主トランプ—“世界の終末”は起こるか?』(近代消防社)、『東京オリンピック・パラリンピックは、テロ対策のレガシーになるか?』(同)など多数。