2019年10月08日 12:41 公開

ニューヨーク連邦地裁は7日、ドナルド・トランプ米大統領に対して、8年分の納税記録をニューヨークの捜査当局に提出するよう命じた。トランプ氏の弁護団は、トランプ氏が大統領でいる間は刑事捜査から免除されると主張していたが、ヴィクター・マレーロ裁判長は「不快極まりない」言い分だと強く批判した。

地裁判決は、トランプ氏と不倫関係にあったと主張する女性2人への「口止め料」支払いについての捜査に関連するもの。

連邦地検は、1976年に当選したジミー・カーター氏以来、すべてのアメリカ大統領は就任前もしくは就任時に、自主的に納税記録を公表してきたと主張した。

マレーロ裁判長は判決文で、大統領による刑事免責の主張は「この国の政府の成り立ちや憲法の理念にとって、不快極まりない」と表明。「大統領を無条件かつ無期限に司法手続きから免責するなど」認めないと書いた。

さらに、「大統領の刑事免責特権について本当に絶対的なことはただひとつ。そのような免責の存在や形について、憲法が何も定めていないということだ」とした。

これに対してトランプ氏は7日のツイートで、「極左民主党はあらゆる局面で失敗したから、今はニューヨーク市と州の民主党検事たちをトランプ大統領にけしかけている。他の大統領がこんな目に遭ったことはない。これに近い話さえない!」と書いた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1181212691203084289


納税記録は公表されるのか

いいえ。大統領の弁護団はただちに控訴した。高裁にあたる第2連邦巡回区控訴裁判所は「速やかな審理」を終えるまでは、地裁判決の一時的な差し止めを認めた。

高裁が控訴を棄却すれば、ニューヨーク連邦地検は2011年から2018年にかけてのトランプ氏の納税記録を差し押さえることができる。対象となる記録には、私的なものや関連企業のものも含まれる。

ただし、その場合も納税記録は州の刑事訴訟法にもとづき、公表されない可能性がある。

事件の背景は

トランプ氏が納税記録の提出を命じられることになった裁判は、マイケル・コーエン元顧問弁護士(連邦議会への偽証、選挙資金法違反、脱税などの罪で禁錮3年の有罪となり、ニューヨーク州北部で服役中)がトランプ氏の不倫相手とされる2人に口止め料を支払ったことに関するもの。

捜査当局の調べによると、コーエン元弁護士は2016年大統領選の最中の8月から10月にかけて、元「プレイボーイ」モデルのキャレン・マクドゥーガル氏とポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に口止め料を支払った。トランプ氏は不倫関係については否定しているが、コーエン元弁護士に対して支払いを清算したことは認めている

トランプ氏は、元弁護士への支払いは選挙資金を使ったわけではないので、合法だと主張。これに対して、マンハッタン連邦地検のサイラス・ヴァンス検事は、トランプ氏は一族のトランプ・オーガナイゼーションによる選挙資金法違反があったかどうかを捜査している。

米紙ワシントン・ポストによると、ヴァンス検事はトランプ氏を「被告人として特定していないし、その前提もない」と話している。

トランプ選挙対策本部は、ダニエルズ氏とマクドゥーガル氏への支払いを連邦選挙管理委員会に報告していない。2016年11月8日の大統領投票日を控えた支払いが、トランプ氏の個人の名誉を守るためのものだったのか、それとも大統領候補としてのイメージを守るをためのものだったのかで、違法性が異なってくる。

コーエン元弁護士は選挙資金法違反を認めて禁錮3年の刑で服役中だ。しかし、これは自分の刑期を軽くするため検察と口裏を合わせたに過ぎないとトランプ氏は反論している。

トランプ氏の弁護団はさらに、連邦地検のヴァンス検事は民主党支持者だと指摘。大統領に対する捜査は政治的な思惑によるものだと批判している。

トランプ氏の納税申告書を入手しようという動きは、ほかにもある。野党・民主党が多数を占める連邦下院では、トランプ一族の財務状況を調べる情報委員会と金融委員会がドイツ銀行にトランプ氏の資産情報の提出を命じた。だがトランプ氏は、これを阻止する目的でドイツ銀行などを訴えていて、高裁判断を待っている(ニューヨーク連邦地裁の一審は下院による提出命令を支持)。

カリフォルニア州では今年7月、2020年大統領選で同州の候補者名簿に記載される条件として、個人所得税の納税申告書の公表を義務付ける州法を成立させた。これについて今月初め、トランプ氏の差し止め請求をカリフォルニア連邦地裁が認めたが、州政府は控訴する方針を示している。

(英語記事 Judge orders Trump to hand over eight years of tax returns