青山佾(明治大名誉教授、元東京都副知事)

 「他県の電気設備工事会社が千葉を走り回っているというのに、千葉では案内もつけず、被害状況も自分で把握していないのか。全国を敵に回すぞ」。台風15号による被害が相当に大きいことが明らかになり始めたころ、教え子である千葉の政治家の一人に、私は電話でそう忠告した。

 千葉県のある市長が東京電力の復旧見通しの甘さを批判しているのを、テレビのニュースで目にしたからだ。その後、「千葉は全国を敵に回した」というコメントが会員制交流サイト(SNS)に散見されたが、その投稿は私ではない。

 日本の災害対策基本法は、市町村に対して被災状況を速やかに都道府県に報告することを求めている。被災した市町村の職員が不足する場合は、都道府県が職員を派遣することも定めているし、当然都道府県に支援義務がある。

 そもそも避難勧告は、一次的には市町村が発することになっている。これを講学上は「市町村第一主義」「自治体第一主義」という。

 このように定めたのは、1959年の伊勢湾台風で5千人を超す死者・行方不明者を出したことが契機となった。日本中が衝撃を受けた被害を受けて、地域を熟知する市町村を災害対策の主軸においたからである。

 道路は自治体にとって基本的な財産である。自治体の経理を市民に分かりやすく見せるためバランスシートをつくるが、自治体では所有財産の大宗を道路が占める。
停電が続く千葉県鋸南町では、住民らが工面したガソリンと発電機でともした明かりに人々が集まっていた=2019年9月12日
停電が続く千葉県鋸南町では、住民らが工面したガソリンと発電機でともした明かりに人々が集まっていた=2019年9月12日
 道路は数十年、数百年かけて資産形成してきたものだ。ただ、価値は大きくても売ることができないのでバランスシートから除かないと、実態が分からない。

 自治体の被災状況の把握にとっても、復旧の見通しにとっても、道路の被災状況の把握は出発点であり、基本である。電力会社任せにはできない。