2000年、伊豆諸島・三宅島(東京都三宅村)の雄山で大規模な噴火が起きたとき、私は東京都副知事を務めていた。9月に全島民が島外へ避難したあと、政府高官から年内に一時帰島できるような発言が飛び出し、大きなニュースになったことがあった。

 だが、石原慎太郎知事は不用意な発言だとして、直ちに打ち消した。災害対策本部で指揮を執っていた私たちは、大量の降灰が降雨のたびに泥流・土石流と化して道路を破壊している現地の状況について正確に把握していた。

 当時、副知事は2人しかいなかったが、私は東京の島嶼(とうしょ)部で噴火や地震、土砂崩れといった災害が発生するたび、島に飛んだ。議会の本会議があっても、それを休んで島に行くことに努めた。

 欠席をとがめる議員はおらず、むしろ一緒に来てくれるほどだった。各政党の伝(つて)で、大臣や政党幹部を現地に呼んでくれた。

 島の道路は都道か村道であり、それが壊れて停電や電話の不通が生じた場合、電力会社や電話会社が復旧の当事者になるが、道路を所有・管理する自治体もまた当事者である。私たちはそういう意識だった。

 公有であろうと私有であろうと、倒木によって電力や通信の設備が壊れたら、自治体が当事者となる。復旧見通しというのは、自治体が道路の被災状況を把握し、道路や橋を回復する見通しを立てた上での話であるからだ。
2000年9月、三宅村の長谷川鴻三村長(右)の案内で、三宅島噴火による土石流被災地域を視察する東京都の石原慎太郎知事
2000年9月、三宅村の長谷川鴻三村長(右)の案内で、三宅島噴火による土石流被災地域を視察する東京都の石原慎太郎知事
 自治体はお客さまではない、当事者だ。自治体にそういう責任感があるから、世界に冠たる日本社会の安定が成り立っている。

 電線絡みの倒木処理は電力会社に依頼するが、そうではない道路の倒木を片付けるのは自治体の仕事である。だから、自治体が電力会社の復旧見通しをとやかく言うこと自体に違和感を覚える。見通しが甘いと思ったならば、直ちに訂正する「実力」が自治体に求められる。