災害対策基本法ができた1961年当時の市町村数は4千近くあった。今では1700くらいしかない。

 広域合併の結果、地域の実態からかけ離れた市町村が増えたということだろうか。2000年前後の構造改革によって市町村の職員数も減っている。

 被災状況に限らず、避難勧告についても、近年は勧告を出さずに多くの犠牲者が出たり、数十万人に対し一括して避難勧告が出されたりする例が目立つ。これでは、市町村が基本法の期待する防災機能を十分に果たしていない。

 つまりは、自治体の「防災力」が弱くなっているのではないか。私たちが先ごろ、若手の研究者や自治体の実務家を糾合して「令和防災研究所」を設立したのも、そういう問題意識に基づいている。

 それに、「死者が出ないと大きな災害ではない」という感覚を持つ人がいるとしたら間違いだ。屋根の一部が飛んだ家が1万戸を超えたというのは、市民や自治体の感覚からいえば、未曽有の大災害である。

 屋根の一部が飛んで雨風が吹き込んでしまえば、日常生活の継続は困難と考えるのが生活者の感覚だ。2000年の三宅島噴火は今日の中学校教科書にも登場する大災害だが、死者を一人も出すことはなかった。それでも、しばらく島に住めなくなったのだから、国民レベルでは大災害なのだ。
台風15号の被害にあった千葉県館山市内の住宅で、屋根にブルーシートなどを張る作業をする地元建設業者やボランティアの人たち=2019年9月14日
台風15号の被害にあった千葉県館山市内の住宅で、屋根にブルーシートなどを張る作業をする地元建設業者やボランティアの人たち=2019年9月14日
 一部損壊住宅では、被災者生活再建支援法の対象にならず、再建に公費が支給されないというのも現実的ではない。支援法では、半壊し、大規模補修を行わなければ居住困難な住宅を対象としている。2000年の三宅島噴火では、全島避難のため自宅に住むことができないので、物理的に壊れていない住宅でも、全戸適用対象になった。

 もともとこの制度は、阪神・淡路大震災のあと、政府としては個人財産形成の補助はできないということで、国会において議員立法で成立し、支給のための財源も自治体側が基金の半分を拠出している。被災者の生活支援という立法の精神に沿うよう運用すべきだ。