石渡嶺司(大学ジャーナリスト)

 1963年、フランキー堺主演による作家、菊池寛の立志伝映画が公開された。タイトルは『末は博士か大臣か』。封切り当時、大学院の博士課程進学者は少なく、65年の学校基本調査では3551人だった。

 博士課程に進学すれば、研究職としてのキャリアを歩むことになる。そして、映画のタイトルにまでなる、ということは進学者の希少さと立身出世物語にもなるほど確かなキャリアを示していた、と言えよう。この博士課程進学者は2005年に1万7553人まで増加する。

 1991年、当時の文部省は大学院生の在籍者数を10年間で倍増する計画を打ち出した。専門性の高い知識を備えた人材を輩出することで研究力を上げることが狙いだった。

 実際に、博士課程在籍者数は91年度の3万人近くから19年現在は約7万4千人にまで増えている。在籍者数を増やす、という計画そのものは成功した。

 一方で、進学者数は2003年をピークとして緩やかに減少し、18年は約1万5千人程度となっている。1965年時点に比べれば約4倍の増加だが、55年前と比較すること自体、無理があろう。

 では、海外と比較した場合はどうだろうか。文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が2019年8月、米国や英国、韓国など研究開発費の多い7カ国の比較調査を発表した。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
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 これによると、日本は2000年度に人口100万人当たり127人だったのが、16年度には118人に減少している。これに対し、米国は2000年度の141人から15年度258人、韓国は2000年度の131人から17年度には278人と、それぞれ増加している。

 日本では、大学生や大学院生(修士課程)を取材しても「博士課程には行きたくない」と敬遠する学生が多い。いったい、なぜ博士課程への進学は嫌われてしまったのだろうか。