2点目は大学教員への不信感である。博士課程の在籍者や修了者に取材すると、研究室の教員から雑用を押し付けられたという話をよく聞く。それが大学院博士課程ならどこでもある、とまでは言い切らないまでも、そうした話が多いのは確かだ。

 研究室の担当教員からすれば、自身の研究が忙しく、任せられる人員が博士課程在籍者しかおらず、致し方ないという事情もあるだろう。しかし、在籍者からすれば、自身の研究より研究室の担当教員に押し付けられた雑務処理が優先となってしまう。そうした状況を見ていれば、博士課程への進学意欲が湧く学部生が増えるとは思えない。

 また、学生の不信感を助長しているのが、博士課程への進学を強調する教員の存在だ。学部生や大学院生(修士)に対して、博士課程への進学を強く勧める教員はどの大学にもいるが、その強引さが今はあだとなっている。

 特に生物系学科では、博士課程に進学しても、結局は「ピペットを洗浄する雑用要員」となり果てる。「ピペットを洗浄する奴隷」を略した「ピペド」というスラング(俗語)まで登場するほどだ。

 「学部生のときは『修士に行くのが当たり前』と言われ、修士に進学すると『研究を放り投げるなんて』と脅され、博士課程に進学する。そのせいで、就職できなかった先輩は多い。今では、教授が何を言っても聞かないようにしている」。学生に聞くと、このような答えが返ってきた。

 大学教員が学生に修士・博士課程を勧めるのはほかでもない。大学院(研究科)の在籍者数をちゃんと増やさなければ、存亡が危うくなるからだ。定員充足率が低いと、国からの運営交付金が減らされる可能性も生じる。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)

 そのため、大学側は院生集めに必死にならざるを得ず、ホームページ上では4月に入ってもなお博士課程の募集を続ける大学が少なくない。昨年に引き続き追加募集を行った神戸大では、今月8日から願書受け付けを始めた。


 今から10年も前の記事だが、事情は現在も全く変わっていない。大学教員の立場からすれば、致し方ないとも言える。だが、学生にとっては「雑用の多さや就職のリスクを隠すなんて」と不信感が募るばかりで、博士課程への進学を抑制する一因となっている。

 ところで、博士課程は研究を順調に進められれば、3年で修了となる。だが、そう順調に進む学生は多くない。これが博士課程進学者を抑制する要因の3点目「キャリアの不明瞭さ」である。