2019年10月10日 13:27 公開

トルコは9日、シリア北東部のクルド人民兵組織に対する軍事作戦を開始した。アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、この作戦を「承認」していないと述べるとともに、軍事行動の引き金になると批判を受けている、同地域からの米軍撤退を擁護した。

ドナルド・トランプ大統領は6日、トルコによる軍事作戦に関与しない方針だと発表。すると、トルコがクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」への攻撃を開始する道を切り開くことになりかねないなどと、身内の与党・共和党内からも批判が殺到していた。

こうした中、ポンペオ長官は米公共放送PBSのインタビューで、トルコには「正当な安全保障上の懸念」があり、「トルコ南部がテロの脅威にさらされている」と主張。トランプ大統領による突然の米軍撤退表明を擁護した。

「承認していない」

アメリカがトルコに対し、シリア北部への攻撃を認めたとの報道については、「虚偽」だと反論。「アメリカはトルコに(シリア進攻を)承認していない」と述べた。

PBSのジュディ・ウッドラフ氏が「アメリカはトルコに(攻撃を)承認したのだから、どんな結果であろうとも(シリア北部で)起きていることに対してアメリカは責任を負うのか」と尋ねると、ポンペオ氏は「それは虚偽だ。アメリカはトルコにそんなこと承認していない」と答えた。

https://twitter.com/NewsHour/status/1182058849118904321

「テロの回廊の構築防ぐ」

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は、軍事作戦の目的は、国境地域に「テロの回廊が構築されることを防ぐ」ためだとしている。

トルコ軍は国境地域に「安全地帯」を確保したい考え。この安全地帯からYPGの戦闘員を完全に排除し、シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民360万人のうち、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしている。

一方のクルド人部隊は、トルコの攻撃に対抗する構え。

トルコとクルド人、米の関係

アメリカを中心とした連合国がシリアで過激派勢力「イスラム国」(IS)を破ることができたのは、クルド人勢力の協力によるところが大きい。

YPGは、トルコ南部と国境を接するシリアで活動。シリア民主軍(SDF)の大部分を占めており、SDFはアメリカ軍の支援を受けてイスラム過激派組織IS掃討に貢献した。

クルド人部隊は、西洋人捕虜30人近くの拷問や殺害などに関与した、IS戦闘員だったイギリス人2人を拘束した。

拘束されたエル・シャフィ・エルシェイク氏とアレクサンダ・コーティ氏は、「ビートルズ」と呼ばれたイギリス人戦闘員組織に所属していた。シリア北部のクルド人部隊の拘置所で拘束されていた2人は現在、アメリカ側へ身柄が引き渡されていると、米紙ワシントン・ポストは伝えている。

トルコ政府は、YPGをテロ組織と認定。クルド人地域のトルコからの独立を訴えているクルド労働者党(PKK)も、YPGと関係があるとみている。

トランプ氏は声明で、トルコが「行き過ぎた」行動をとるようなことがあれば、トルコ経済を「壊滅させる」と警告。アメリカは「攻撃を支持」していないし、軍事行動は「悪い考え」だと述べた。

その後、トランプ氏は記者会見で、トルコとクルド人は「何世紀にもわたって争い続けている」、クルド人部隊は「第2次世界大戦でわれわれに協力しなかったし、ノルマンディー上陸作戦にも協力しなかった」と述べた。そして、「そうは言っても、われわれはクルド人が好きだ」と付け加えた。

味方を見捨てた

身内の共和党、そして野党民主党からは、シリア北部からの米軍撤退を非難する声が上がっている。

熱心なトランプ支持者の共和党重鎮、リンジー・グレアム上院議員は、アメリカは味方のことを「臆面もなく見捨てた」と述べた。

対トルコ制裁を準備

グレアム氏はツイッターで、クリス・ヴァン・ホーレン上院議員(民主党)と共同でトルコ制裁案を用意したと発表。「米政権側はトルコへの対抗措置を拒否しているが、超党派の強力な支持を期待する」としている。

軍事行動の状況

9日、シリアの複数の町や村が、トルコによる空爆や砲撃を受け、民間人数千人が非難を強いられた。

クルド人部隊によると、これまでに少なくとも民間人5人が死亡、少なくとも25人が負傷した。

その後トルコ国防省は、トルコ軍と、トルコ寄りのシリア反体制武装組織「自由シリア軍」(FSA)が「ユーフラテス川の東側」に進攻したと発表した。

トルコ軍は「テロリスト」に関連する181カ所を攻撃したとツイート。親トルコ派グループはAFP通信に対し、YPGが支配するシリア北部タル・アブヤドで攻撃を開始したと述べた。

一方で、SDFのムスタファ・バリ報道官はツイッターで、地上でトルコ側を撃退したとしている。

SDFによると、IS戦闘員を拘束中の拘置所がトルコによる空爆被害を受けたという。人道上の懸念が高まる中、SDFは米国主導の有志連合に対し、「罪のない人々への攻撃」を止めるため、飛行禁止区域を定めるよう求めた。


過去3年間で3度目となる、シリア北部への軍事行動では、タル・アブヤドからラアス・アルアインに広がる約100キロの範囲が標的となるとみられていた。

バリ報道官によると、国境の町コバニとカーミシュリが砲撃を受けたという。トルコ軍がこれらの町に向かって前進する場合、トルコ軍は主にクルド人が暮らす人口密集地を通ることとなる。

国際社会の反応

欧州連合(EU)は、「ベルギー、フランス、ドイツ、ポーランド、イギリスが今回の軍事行動について協議するため、国連安保理事会の開催を求めている中、『安全地帯』なるものが(中略)難民帰還の国際基準を満たすとは思えない」としている。理事会は10日に開かれる予定。

アラブ連盟も、エジプト・カイロで12日に緊急会合を開くと発表した。

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、NATO加盟国のトルコには「正当な安全保障上の懸念」があるが、「確実に相応で慎重な(中略)活動を行うために、自制心をもって行動すること」を期待すると述べた。

トランプ氏は声明で、トルコには、IS戦闘員の疑いのある人物が拘束されたままの状態を保つこと、そしてISが再び結集しないようにする責任があるだろうと述べた。

(英語記事 US did not approve Turkey offensive, says Pompeo