2019年10月11日 14:24 公開

イギリスの家電大手ダイソンは10日、電気自動車(EV)開発プロジェクトを中止すると発表した。開発チームは「素晴らしいEV」を開発したものの、「商業的には実現不可能」だと判断したという。

創業者のサー・ジェイムズ・ダイソンは全社員宛ての電子メールで、このプロジェクトの買い手が見つからなかったと説明した。

ダイソンは2016年、20億ポンド(約2700億円)を投資して「急進的で独特な」EVを開発すると発表。開発するEVは大衆市場向けではないと説明していた。

資金の半分は車の製造に、もう半分はEV向け電池の開発に充てる計画だった。開発部門には523人が所属していた。

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サー・ジェイムズのメールによると、ダイソンはシンガポールとイギリスのEV開発施設を閉鎖する予定。

ダイソンは2018年10月に、シンガポールにEV工場を設置することを明らかにしていた。この工場は2020年に完成し、2021年に生産を開始する予定だった。

ダイソンはまた、イギリス国内での交通設備の研究開発(R&D)に2億ポンドを投じる計画を立てていた。すでにこの資金の大半を使っており、残りは別のプロジェクトへ振り向けるという。

EVプロジェクト向けの資金についても、電池技術など他の開発プロジェクトに使われる予定だ。

メールの中でサー・ジェイムズは、「このニュースを聞き、消化するのがつらい人たちへ、これは製品の失敗でも、開発チームの失敗でもない」とつづった。

一方で、「私たちは開発プロセスにおいて非常に懸命に働いたが、単純に、商業的に成功する見込みはもうないとみている」と話した。

「ダイソンの自動車チームは素晴らしい車を開発した。私たちの哲学に忠実でありながら、そのアプローチは創意に満ちていた」

別部門に配置転換

EV開発チームの人員には今後、掃除機や扇風機、ドライヤーといった製品部門への異動が検討されている。

また、ダイソンは今後も電池技術の開発は続けるとしている。

サー・ジェイムズは、「この電池技術は素晴らしい手法でダイソンに利益をもたらし、新しくワクワクするような方向に連れて行ってくれるだろう」と語った。

「簡潔に言えば、私たちの投資意欲は衰えていないし、イギリスとシンガポールに根付かせたものを引き続き深めていきたいと考えている」

「方向転換したプロジェクトはこれが初めてではないし、これが最後にもならないだろう」


<分析> オ・レゲット、ビジネス担当編集委員

ダイソンは何か革命的なものを作りたかった。同時に、採算も合わせる必要があった。この足し算は成功しなかった。

EVの販売台数は急激に伸びている。しかし、これまでの車に比べると製造コストはなお高く、利益もほとんど生み出していないのが現状だ。

独フォルクスワーゲン(VW)のような大手メーカーであれば、EV産業に何百億ユーロもつぎ込むことができるだろう。究極的にはスケールメリットが技術を安くし、利益を生むのだ。

EVの素晴らしさを世に知らしめたアメリカの新興企業テスラでさえ、巨額の資金を失い、投資家に頭を下げなくてはならなかった。

ダイソンは単純に、こうした大手企業とやりあうには資金が足りないと結論付けた。しかし、電池技術を飛躍的に発展させようという努力は続けるようだ。


(英語記事 Dyson scraps plans for electric car