若林亜紀(ジャーナリスト)

 関西電力の役員らが総額3億円以上の金品を、原発がある福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から受け取っていた問題で、関電会長の八木誠氏が9日、引責辞任した。

 監督官庁としての責任を問われた、菅原一秀経済産業大臣は「第三者委員会で究明していただき、その報告を受けて経産省として厳正に処していく」と話した。

 けれども、これは監督官庁としてあまりに後手ではないか。原発は民営とはいえ国策であるのに、経産省は関電と地元の元公務員の間の10年以上にわたる不穏当な関係に気づかなかったのか、相談は受けなかったのか。関係者からの内部通報を受けたことはなかったのか。

 経産省には、電力会社の営業や約款変更、料金改定について許認可権がある。また、発電所や原発がある地域への交付金など、国費を電力会社に流す窓口となっている。

 したがって、電力業界への定年前後の再就職、いわゆる天下りも多い。

 2008年に衆議院調査局が「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」報告書を出した。これは、通称「民主党の天下り調査」と言われ、国の省庁から、許認可や補助金交付の対象となる公益法人への天下り人数を集計したものである。その後更新されていないため、現存する、天下りの詳細についての唯一の資料となっている。

 全945ページにもなる厚い報告書をめくると、経産省の中で、原子力発電を所管するのは、大きくわけて資源エネルギー庁と原子力安全・保安院であったことがわかる(保安院はその後環境省所管の原子力規制委員会となった)。

 エネ庁の中に長官官房、省エネルギー・新エネルギー部、電力・ガス事業部の電力基盤整備課、放射性廃棄物等対策課、原子力政策課などがある。また、独立した、関東、中部近畿といった地方ごとの保安監督部がある。これらが所管する公益法人の中で、電力・原子力関係のものが52あり、天下りが行われていた。

 原子力安全基盤機構に38人、電気技術者試験センターに11人、日本電気技術者協会に11人、関東電気保安協会に152人、中部電気保安協会に78人、関西電気保安協会に15人、九州電気保安協会に32人、発電設備技術検査協会に10人、原子力安全研究協会に3人、原子力発電技術機構に4人、原子力環境整備促進・資金管理センターに8人、火力原子力発電技術協会に2人など。52の団体に、計559人が天下り中であった。

 ただし、経産省所管団体といえども、原発関係の天下りは文部科学省からもある。原子力研究を所管していた旧科学技術庁が文科省に吸収されたゆえんである。発電所や付帯施設の建設・整備の関係で、国土交通省からも多い。逆に、この52団体以外にも、文科省、環境省所管の原発関連法人があり、そこに経産省OBも天下っている。
関西電力の役員らが金品を受領していた問題で会見。会見の冒頭、頭を下げる八木誠会長(左)と岩根茂樹社長=2019年10月9日、大阪市福島区(安元雄太撮影)
関西電力の役員らが金品を受領していた問題で会見。会見の冒頭、頭を下げる八木誠会長(左)と岩根茂樹社長=2019年10月9日、大阪市福島区(安元雄太撮影)
 天下りの数はその後も増え続けている。

 内閣人事局は先月27日、管理職以上であった公務員の昨年度の新規天下りの実態を公表した。それによれば、経産省を課長以上で退職して、独立行政法人や公益法人、民間企業などに再就職した人は130人であった。2009年度には61人だったので、倍増である。

 ところで、天下り役人は、いったいどんな仕事をしているのだろうか。
 
 象徴的な問題が2011年に起きている。38人の天下りを擁していた原子力安全基盤機構問題である。同機構は、原子力発電所の安全検査を行っていたが、検査対象の電力会社に検査案を作ってもらい、その通りに検査を行っていたことが発覚し、批判を受けた。

 国が天下りを擁護する言い訳は、高い専門性と職務経験を生かすためというが、機構の原子力安全検査では経産省OBの知見はまったく生かされていなかったと言える。機構は2014年に改組して原子力規制委員会という名に変わった。