ただ、当時の民主党政権の「脱ダム」に象徴される公共インフラ削減に対しては、国民世論の強い後押しもあったことは指摘しておきたい。政権発足直後、民主党の緊縮政策=デフレ政策で日本経済が危機を迎える、と筆者があるラジオ番組で発言したところ、後で番組に空前の抗議が起きたという。

 事実、筆者のツイッターもまさに「民主党政権信者」たちの抗議で炎上した。当時、筆者の意見を後押しする人はほとんどいなかったことは、自分の記憶に今でも鮮明に残っている。世論がこれから賢明であることを伏してお願いしたい。

 去年、テレビ朝日系『ビートたけしのTVタックル』に出演したとき「日本の防災」をテーマに議論を交わしたことがあった。その際、同じく出演していた治水の専門家、土屋信行氏から著書『首都水没』(文春新書)を頂いた。

 本書では、八ツ場ダムの建設中止が、利根川水系や荒川水系の洪水調節方式を崩壊させる愚の骨頂であると指摘されている。洪水調節については、利根川も荒川も上流に「ダム群」、中流に「遊水地群」、そして下流に「放水路」か「堤防補強」で対応している。

 八ツ場ダムは上記のように、利根川水系の上流ダム群の一つであり、民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」のスローガンは、この洪水調節方式を破綻させる行為だった、と土屋氏は著作で記している。

 今回の台風でもそうだが、最近の大規模な自然災害でよく分かることは、「コンクリートから人へ」のような政治スローガンに踊らされることなく、どのような防災インフラが必要なのか、それを真剣に考えることの大切さである。

 国民の命と財産を守るためには、コンクリートも何でも必要ならば排除すべきではないのだ。単純で極端な二元論は最低の議論と化してしまう。

八ツ場ダムに関する意見交換会で、地元住民と意見交換をする前原誠司国土交通相=2010年1月、群馬県長野原町(三尾郁恵撮影)
八ツ場ダムに関する意見交換会で、
地元住民と意見交換をする
前原誠司国土交通相=2010年1月、
群馬県長野原町(三尾郁恵撮影)
 最低で極端な議論といえば、民主党政権下で行われた、スーパー堤防(高規格堤防)廃止に至る「事業仕分け」の議事録を今回読んだが、その典型だった。また、日本に巣くう「本当の悪」が誰なのか、今さらながら再確認できた。

 その議事録によると、財務省主計局の主計官がコストカットを求めたことに対して、国会議員や有識者、国交官僚といった他の委員が「忖度(そんたく)」をしていたことがうかがえる。もっと言及すれば、出席した財務官僚が納得しなければならない、という「財務省中心主義」が見えるのである。

 つまりは、みんな財務省の顔色をうかがっているのだ。これでは、主権者が国民ではなく、一官僚であるかのようだ。