2019年10月15日 15:41 公開

イギリスでは14日、議会の新しい会期が始まり、エリザベス女王が政府の施政方針演説を読み上げた。ボリス・ジョンソン首相は演説の内容について、犯罪や保健、環境、欧州連合(EU)離脱などについて「野心的な」政策を掲げたと述べたが、野党側は「総選挙用の公約」に過ぎないと反論している。

演説では26件の法案が発表された。ブレグジット(イギリスのEU離脱)をめぐっては、農業などに関する新たな規制枠組みに加え、移民制度改革などが盛り込まれた。

このほか、凶悪犯への刑罰厳格化や、プラスチックごみ削減に向けた法的拘束力のある目標設定などが明らかになった。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、演説は「長いショッピングリストのようだ」と指摘した一方、ジョンソン首相は教育や医療、高齢者福祉といった「日々の生活」に注力していると分析した。

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議会の初日は、ウェストミンスター宮殿にエリザベス女王が馬車で到着し、上院の玉座で演説して始まる。この日はウェールズ公チャールズ皇太子が同席した。

演説で明らかにされた政策はその後、5日間にわたって議会で審議される。

ただし、与党・保守党は9月に行われたブレグジット関連法にまつわる投票で造反議員を追放し、過半数を失ったため、演説の内容すべてが法律として成立するわけではない。

そのため、解散総選挙を求める声が再び高まる可能性もある。

この日の下院での審議でジョンソン首相は、政策は「新たな機会の時代をイギリス全体にもたらすものだ」と自信を示した。

一方、最大野党・労働党のジェレミー・コービン氏は、女王の演説は「プロパガンダ演習」に過ぎないと反発した。

ブレグジット関連法案は7つ

ジョンソン首相は10月31日のEU離脱を目指して、EUと交渉を続けている。

17日と18日に行われるEU首脳会議(サミット)までに合意にたどり着けば、翌19日にも離脱協定法案として議会採決にかけたいとしている。

今回、ブレグジットに関する法案は7件発表された。いずれもEU離脱後のイギリスのあり方を定めるもので、漁業や農業、貿易、金融サービスについては新たな規制枠組みを制定する方針。

また、EU市民のイギリスへの移動を制限する政策や、ポイント制移民システムを2021年から開始する計画などが明らかになった。

ジョンソン氏は関連法案について、「ブレグジットが示しているチャンスをつかむ」ことに注力したと語っている。

このほか、女王の演説で発表された政策は以下の通り。

  • 刑法では7つの法案が提案された。凶悪犯罪での受刑者や、一度国外追放となった外国人犯罪者に対する刑罰の厳格化などが盛り込まれた。また、家庭内暴力(DV)に対する法案も前期から持ち越され、引き続き審議される
  • 医療については、国民保健サービス(NHS)を調査する法的権限を持った独立団体「保健サービス安全調査委員会(HSSIB)」の設置が提示された。精神疾患による収容人数を減らすためのメンタルヘルス法の改正案も発表された
  • 環境をめぐっては、プラスチック削減、大気汚染の低減、生物多様性と水質の改善などについて法的拘束力のある「改善目標」の設定が計画されている。また、トロフィー ハンティング(娯楽としての狩猟)を禁じる動物福祉法案も提出された
  • 離婚法では、離婚による子どもへの影響を最小限にするため、雇用法では、レストランなどに従業員が受け取った「全てのチップ」を与えるよう義務付けるため、それぞれ改正案が提示された

ジョンソン首相は、一連の法案を示すことで、政府が実現を目指すのはブレグジットだけではないと述べた。

これに対し労働党のコービン党首は、「過半数を45議席も割り、議会投票で100%負けている政府が、この議会で実現できない施政方針を並べる。こんな茶番はない」と批判した。

スコットランド国民党(SNP)下院院内代表のイアン・ブラックフォード議員は、特にブレグジット法案について強く批判し、「イギリスは非常に暗い日々に突入した」と話した。

また、EUは「政治的協力と平和の素晴らしい例だ。戦争の傷跡や喪失の痛みを過去のものにし、大陸全体で手を取り合うことを選んだ」と述べ、そこから離れることは「悲劇」だと語った。

政府のブレグジット政策をめぐり保守党を離党し、無所属議員となった親EU派のドミニク・グリーヴ元法務長官は、ブレグジットが解決するまで、首相が国を統治するのは「きわめて困難」になるはずだと話した。

(英語記事 PM sets out 'ambitious' plans in Queen's Speech