宇山卓栄(著作家)

 天皇の価値は歴史的に3つの要素により、形成されてきました。それは「外交」「政治」「文化」です。

 古来、日本は「天皇」の称号を持つ君主を戴(いただ)き、中国皇帝に対抗しました。

 アジアでは、朝鮮王などの各地の王を、中国皇帝が従えていました。天皇は中国皇帝の支配下の王ではなく、王よりも格上の「皇」として、中国皇帝と対等の存在であり、日本の主権を守ってきました。

 これが3つの要素のうちの「外交」です。

 明治時代、福澤諭吉が「わが国の皇統は国体とともに連綿として外国に比類なし」(『文明論之概略』1875年より)と述べたように、日本の皇統は古代から現在に繫がる一貫性を持ちます。

 諸外国では、しばしば有力者によって王統が廃絶させられ、取って代わられ変乱や革命に巻き込まれました。

 18世紀末のフランス革命で、民衆は国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットを殺し、その後、ナポレオンがならず者を率い、ヨーロッパを荒らし回り、混乱に陥れました。

 わが国は天皇の永続性により、無用な混乱もなく、長い歴史の中で国家の安定を維持できました。

 日本では、中世以降、源平の政権から徳川の江戸幕府に至るまで、武人政権が世俗権力を握りましたが、皇統が神聖不可侵であることをよく理解し、天皇によって委託された政権を預かるということを前提として、天皇を唯一の主権者と仰ぎ、その立場を変えることはありませんでした。

 天皇が日本の社会安定に果たした役割は極めて大きいと言えます。

 これが3つの要素のうちの「政治」です。

女系天皇に反対する「皇室の伝統を守る一万人大会」=2006年3月、東京・日本武道館
女系天皇に反対する
「皇室の伝統を守る一万人大会」
=2006年3月、東京・日本武道館
 諸外国では、血で血を洗う宗教戦争が絶えませんでした。

 日本で、大規模な宗教戦争が起こらなかったのは、天皇が大神主を務める神道が日本人の心に浸潤し、異端的な宗教が勃興したとしても、負の影響を最小限に食い止めることができたからです。

 神道という大らかな精神文化を司る祭祀者としての天皇は抗争を調和へと導き、日本人は天皇の宗教的威厳を崇敬することにより、一体化できました。

 これが3つの要素のうちの「文化」です。