これら3つの要素のすべてを兼ね備えた君主が世界史の中に存在したでしょうか。世界史の奇跡とも言うべき天皇、それがわれわれ日本人の変わらぬ君主なのです。

 多くの外国人が天皇について疑問に感じることは、なぜ天皇は「キング」ではなく「エンペラー」なのか、ということです。そもそも、欧米人は天皇をいつから「エンペラー」と呼びはじめていたのでしょうか。

 現在、世界で「エンペラー(emperor:皇帝)」と呼ばれる人物はたった一人だけです。それは日本の天皇です。

 世界に王は多くいるものの、皇帝は天皇を除いて、残っていません。

 国際社会において、天皇のみが「キング(king:王)」よりも格上とされる「エンペラー」と見なされます。

 「天皇」は中国の「皇帝」と対等の称号で、「キング」ではなく、「エンペラー」であるのは当然だと思われるかもしれません。

 日本人にとって当たり前の話ですが、欧米人もこうした経緯を理解して、「エンペラー」と呼んでいたのでしょうか。

 一般的な誤解として、天皇がかつての大日本帝国(the Japanese Empire)の君主であったことから、「エンペラー」と呼ばれたと思われていますが、そうではありません。

 1889年(明治22年)の大日本帝国憲法発布時よりもずっと前に、天皇は欧米人に「エンペラー」と呼ばれていました。

 江戸時代に来日した有名なシーボルトら3人の博物学者は、長崎の出島にちなんで「出島の三学者」と呼ばれます。

 「出島の三学者」の1人で、シーボルトよりも約140年前に来日したドイツ人医師のエンゲルベルト・ケンペルという人物がいます。

 ケンペルは1690年から2年間、日本に滞在して、帰国後、『日本誌』を著します。

 『日本誌』の中で、ケンペルは「日本には2人の皇帝がおり、その2人とは聖職的皇帝の天皇と世俗的皇帝の将軍である」と書いています。

 天皇とともに、将軍も「皇帝」とされています。

 1693年頃に書かれたケンペルの『日本誌』が、天皇を「皇帝」とする最初の欧米文献史料と考えられています。