潮匡人(評論家)

 10月18日、政府は安倍晋三総理、菅義偉(よしひで)官房長官、茂木敏充外務大臣、河野太郎防衛大臣らが出席した国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開催した。会議後の記者会見で菅官房長官は、以下の発表文を読み上げた。

国家安全保障会議などにおいて、総理を含む関係閣僚の間で行った議論を踏まえ、我が国として中東地域における平和と安定及び我が国に関係する船舶の安全の確保のために、独自の取組を行っていく。

 その上で「情報収集態勢強化のための自衛隊アセットの活用に係る具体的な検討の開始」との方針を掲げ、こう述べた。

活動の地理的範囲については、オマーン湾・アラビア海の北部の公海及びバブ・エル・マンデブ海峡の東側の公海を中心に検討をします。今回の派遣の目的は情報収集態勢の強化であり、防衛省設置法上の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として実施することを考えます。

 これをNHKは「活動範囲については、オマーン湾と、アラビア海の北部、イエメン沖を中心に検討するとしています」と報じ、朝日新聞も翌日付朝刊1面トップ記事で「派遣先としてホルムズ海峡東側の『オマーン湾』のほか、『アラビア海北部の公海』『バブルマンデブ海峡東側の公海』を挙げた」と報じた。いずれの報道も、オマーン湾とアラビア海の北部を別の海域として扱っている。

 だが、もし別の海域なら、政府発表文は「オマーン湾、アラビア海」云々と、最初を「・」ではなく「、」と読点(コンマ)で区切るはずだ。そうなっていない以上、並列する二つの語句を接続したとみなすのが「霞が関文法」である。

 …のはずだが、なぜか、直後の河野防衛相の記者会見では、「活動の地理的範囲については、オマーン湾・アラビア海北部並びにバブ・エル・マンデブ海峡東側の公海を中心に検討していきます」と公表された(防衛省公式サイト)。

 公用文で「並びに」は、「及び」を用いて並列した語句を、さらに大きく併合する際に用いる。見ての通り上記引用に「及び」はなく、理解に苦しむ。まさかとは思うが、官邸と防衛省で想定海域がずれているということなのか…。いずれにせよ、重大な問題にしては、稚拙な会見である。

 はたして政府が想定している派遣海域は具体的にどこなのか。派遣される海上自衛隊の部隊にとっては、それこそが最大の問題となる。

 政府が公表した通り「オマーン湾・アラビア海」なのか、それともNHK以下マスコミが報じたように「オマーン湾と、アラビア海」なのか。けっして些細な違いではない。
ホルムズ海峡付近で攻撃を受けて火災を起こし、オマーン湾で煙を上げるタンカー=6月(AP=共同)
ホルムズ海峡付近で攻撃を受けて火災を起こし、オマーン湾で煙を上げるタンカー=6月(AP=共同)
 もし、マスコミが報じた通り「アラビア海の北部の公海」とは別に、「オマーン湾」への派遣が検討されているなら、それはホルムズ海峡の東側に隣接する海域であり、その分リスクも増す。

 菅官房長官の記者会見では、質疑応答の冒頭、「想定されるリスク」についての質問が飛んだが、その質問には最後まで答えなかった(記者からもさらに問う質問は出なかった)。