小田部雄次(静岡福祉大名誉教授)

 令和になって、天皇、皇后両陛下の活躍が目覚ましい。特に「ご公務」の着実なこなしぶりに、国民の多くが安堵(あんど)している。

 両陛下の安定した「ご公務」ぶりが、国民生活の安定つながることを示しているともいえる。今後も「ご公務」を滞りなく重ねてゆくのを、願うばかりである。

 とはいえ、両陛下の「ご公務」はまだ始まったばかりであり、現在の「ご公務」以上の活躍を願うのは早急であろう。それに、今後数十年は続く、長い期間の「ご公務」を乗り越えていくには、強い体力や精神力と、機敏な判断力などが必要とされる。

 とりわけ、内外にさまざまな課題が生まれると予測される現代においては、なおさらである。両陛下にとっては、そうした変転する時代にも対応できる心身の体調管理が一番優先されるべきことであり、まずは、現状のままの活動を続けることが優先されよう。

 そもそも、天皇の「ご公務」として最も大事な国事行為の活動内容は、日本国憲法に規定されており、天皇の自由意思や判断で変更できるものではない。さらに私的行為とはいえ、宮中祭祀(さいし)も伝統の踏襲が重視され、従来のしきたりを厳格に守ることが求められるものである。

 こうした活動に天皇の自由意思を持ち込むのは難しいし、急速に変革できるものではない。大嘗祭(だいじょうさい)などのあり方について国民の中には種々(くさぐさ)の意見があるのは確かだ。

 しかし、天皇は政府や議会が決定した形を踏襲するだけなので、天皇の個人的意思や判断はあっても、それを表明することはできない。天皇、皇后の主体的判断が関与できない部分では、天皇、皇后の意志とは必ずしも一致しない方向に事態が進むことは、今後増えていくだろう。

 天皇、皇后の個性や主体性が現れやすいのは、「ご公務」のうちでも行幸啓(ぎょうこうけい)などの公的行為においてである。それでも行幸啓はじめ多くの公的行為には定められた形式があるので、行幸啓自体の抜本的な改変は難しい。
「更生保護制度施行70周年記念全国大会」に出席された天皇、皇后両陛下=2019年10月
「更生保護制度施行70周年記念全国大会」に出席された天皇、皇后両陛下=2019年10月
 両陛下ができることは、平成の時代の上皇、上皇后両陛下のように、「ご公務」一つ一つに心を込め、そこににじみ出る個性を国民にそれとなく伝えることであろう。そうした心ある「ご公務」を重ねることで、平成時代と同様に「ご公務」の内容やあり方などが自然に変化していくのではないか。

 それがどのように変化するかは、これからの日本や世界の社会情勢、両陛下の個性、国民の願望などによって定まるだろう。幸いに、両陛下を身近に知る多くの関係者たちは、ユーモア好きで、気さくで、思いやりが深く、芸術やスポーツを愛することを、異口同音に語っている。