田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長代理を務める原英史氏が考案した「新・利権トライアングル」という図式がある。これは、首相官邸サイドや国家戦略特区の仕組みやWG委員を攻撃するための既得権側の批判を図式で表したものである。

 新・利権トライアングルは「業界ないし役所」「マスコミ」「野党」から成るという。ただ、官邸や国家戦略特区を直接攻撃するのは「業界ないし役所」ではなく、野党やマスコミが主体となる。

 野党は国会での委員会質問や、疑惑追及などの際に野党が立ち上げるプロジェクトチーム(PT)の形で、官邸や国家戦略特区を批判する。他方で、マスコミも批判記事を書くことで、国家戦略特区や官邸を攻撃する。

 もちろん、官邸や国家戦略特区が不正や常識的に批判に値することを行っていれば、どんどん批判すべきだ。しかし、国家戦略特区に関する出来事を見ていると、まっとうな理由でマスコミや野党が批判しているようにはとても思えない。

 この連載で何度も取り上げた学校法人加計学園(岡山市)問題や、原氏が巻き込まれた毎日新聞による「指導料」「会食接待」報道などが典型例だろう。現在は後者に関して、国民民主党の森裕子参院議員の発言が大きな話題となっている。森氏の発言を取り上げる前に、なぜこれほどまでに国家戦略特区が批判されるか、考えてみたい。

 批判される理由は二つあるのではないか。一つは「反市場バイアス」というもので、もう一つは単に無知であることだ。

 問題としては無知の方が簡単で、事実を知りさえすれば、問題は基本的に解決する。ただし、無知の前提には、基礎教養の欠如や専門知識の無理解があるかもしれないので、それらを補うには時間がかかるかもしれない。
参院予算委で質問する国民民主党の森裕子氏=2019年10月(春名中撮影)
参院予算委で質問する国民民主党の森裕子氏=2019年10月(春名中撮影)
 だが、反市場バイアスの方はそう簡単にはいかない。同じ事実を提示されても、出てくる結論に「歪み(バイアス)」が掛かっているからだ。

 反市場バイアスとは、ガチガチに規制のある分野に対して、規制を緩和することでさまざまな人たちが取引への自由な参入や退出を可能にする枠組みを、否定的なものとして捉える感情である。

 例えば、貿易自由化によって、ある農産物の関税が廃止されたとする。関税を導入していた理由の多くで挙げられるのが、国内農家の保護だ。