山田順(ジャーナリスト)

 今回の天皇賞は、さまざまな意味で注目される天皇賞となった。まずは、天皇陛下の即位礼正殿の儀後、初めて行われる天皇賞だということだ。

 天皇賞といえば、その起源は、明治時代の「The Emperor's Cup(エンペラーズカップ)」までさかのぼり、優勝馬の馬主には「皇帝陛下御賞盃」が授けられた。この伝統は今も続いていて、現在でも優勝賞金のほか、優勝賞品として皇室から盾が下賜されている。今年はどの馬主が、この名誉ある盾を授けられるのだろうか。

 次に、競馬そのものとしての注目だが、これは、ここまで豪華なメンバーが顔をそろえたことが、過去になかったのだ。なにしろ、GI馬10頭が出走する。中でも最大の注目は、1番人気確実の女王、アーモンドアイと2番人気に違いない3歳チャンピオン、サートゥルナーリアの対決だ。
 
 ただ、競馬ファンの一人としての私の注目は「クリストフ対決」である。アーモンドアイの鞍上(あんじょう)は、クリストフ・ルメール、サートゥルナーリアはクリストフ・スミヨンということで、くしくも同じクリストフをファーストネームに持つ外国人ジョッキーの対決となった。果たして、どちらがこのレースを制するのだろうか。

 普通に考えれば、テン乗り(初騎乗)のスミヨン騎手が不利で、既にアーモンドアイをお手馬にしているルメール騎手の方が有利だろう。2人ともフランス競馬を本拠としたジョッキーだが、その乗り方はかなり違う。

 10度のフランスリーディングを獲得したスミヨン騎手だが、乗り方はどちらかと言うと荒っぽく、また、本人の性格もきつい。日本では、かつてジャパンカップ(JC)でブエナビスタに騎乗して勝ったが、2着のローズキングダムの走行を妨害したとして降着処分を受けている。

 その際、日本の裁決方法に文句をつけ、関係者から顰蹙(ひんしゅく)を買ったことがある。スミヨンは、フランスでも香港でもトラブルを起こしたことがある。
第132回天皇賞・秋をご観戦された天皇、皇后両陛下=2005年10月30日、東京競馬場(斎藤浩一撮影)
第132回天皇賞・秋をご観戦された天皇、皇后両陛下=2005年10月30日、東京競馬場(斎藤浩一撮影)
 それに対して、ルメール騎手の乗り方は柔らかく、性格は温厚だ。日本中央競馬会(JRA)の通年免許を取得してからは年間最多勝を記録したこともあり、まさに優等生といっていいだろう。

 果たして、東京競馬場の長い直線で、2人のクリストフはどのように馬を追ってくるのだろうか。ちなみに、どちらも、父親は障害競走のジョッキーだった。