さらに、東京五輪を見据えて、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズを設立。2017年8月の北海道マラソンからスタートして、9月15日には本番とほぼ同じコース、本番に近い気象条件の中で「一発型選考会」のMGCを行ったばかりだ。

 MGCで2位以内に入った選手は東京五輪代表が即内定となり、男子は中村匠吾(富士通)と服部勇馬(トヨタ自動車)が夢舞台の切符をつかんだ。2人は大学時代(中村は3年時、服部は2年時)に五輪の東京開催が決定している。

 中村は駒沢大の大八木弘明監督から「マラソンで東京五輪を目指して一緒にやらないか」と声をかけられ、大学卒業後も大八木監督の指導を受けてきた。服部も東京五輪を意識して、大学4年のときにはリオデジャネイロ五輪選考会だった2月の東京マラソンに出場している。

 中村は「暑くなれ」と思ってMGCを迎えていたが、札幌開催となると、「暑さに強い」という折角のアドバンテージが薄れてしまう。日本勢は本番とほぼ同じコースを走ったという経験を生かすことができない。

 そして、MGCで2位以内に入れなかった選手にとっては、もう少し涼しいコンディションならば違う結果が出たかもしれない、と思う選手が出てきてしまう。4年に1度のオリンピックは、アスリート人生の中で何度もチャンスがあるわけではない。彼らの気持ちをIOCはどう考えているのだろうか。

 ドーハ世界陸上では日本以外にも東京五輪を見越して、さまざまな暑さ対策をしている国や選手がいた。国際大会でメダルを獲得したことのある海外の競歩選手は、「準備しないもののために競技会を変更しないで」と会員制交流サイト(SNS)で批判している。
2018年8月の北海道マラソンで札幌市街地を走るランナー
2018年8月の北海道マラソンで札幌市街地を走るランナー
 今回の流れを受けて、開催都市の東京都はIOC側にマラソンのスタート時間を1時間前倒して、これまで通り東京で開催することを提案するという。しかし、これも効果としてはほとんど意味がない。

 東京の気象条件を気象庁のホームページで確認したところ、マラソンスタート予定時刻の午前6時は、今年の8月2日(女子開催予定日)が気温27・7度、湿度93%。同9日(男子開催予定日)は気温27・5度、湿度86%だった。