これが午前5時でも、8月2日が気温27・1度、湿度94%で、同9日は気温26・9度、湿度90%となる。日差しの強さは違うかもしれないが、レース中の気温は1~2度しか変わらないのだ。

 では、札幌開催になるとどうなるのか。今年の8月2日と9日の気温を比べると、朝6~8時は東京よりも4~8度ほど低かった。

 ただ、それでも22度を上回る。マラソンでトップ選手が最高のパフォーマンスを発揮できる気温は10度前後なので、気温20度でもまだまだ暑い。

 マラソンが開催都市で実施されないことになれば、近代五輪29回目で初めてのこととなる。五輪競技の会場決定はIOCと国際競技団体(IF)の間で取り決められていることを考えると、東京都ではなく、日本陸連がIAAFに働きかけるなど、毅然(きぜん)とした態度で「東京開催」を主張すべきだろう。

 五輪憲章には「開会式を含めて、16日を超えてはいけない」という規定がある。個人的には、憲章の改正を求めた上で、マラソンと競歩は11月に行うなど、開催時期を遅らせる提案をしてもらいたいと思う。

 というのも、近年の世界陸上は世界の「トップ・オブ・トップ」というべきマラソンランナーが出場を回避する傾向が強くなっているからだ。今回のドーハ大会でも大物2人は出場せず、別のレースに参戦している。
東京五輪とほぼ同じコースで行われたMGCの男子で、27キロ付近を力走する(右から)中村匠吾、大迫傑、服部勇馬ら=2019年9月15日、東京・銀座
東京五輪とほぼ同じコースで行われたMGCの男子で、27キロ付近を力走する(右から)中村匠吾、大迫傑、服部勇馬ら=2019年9月15日、東京・銀座
 5000メートルと1万メートルの世界記録保持者のケネニサ・ベケレ(エチオピア)は9月29日のベルリンマラソンで世界記録まで2秒に迫る2時間1分41秒で優勝。マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)は10月12日のウィーンで行われた「INEOS 1.59 Challenge」というIAAF非公認のイベントで、42・195キロを1時間59分40秒で走破している。彼らが出場の意欲を見せるようなレース環境を整えないと、オリンピックといえども「世界一」を決めるレースにはならない。

 近年のスポーツ界は「アスリート・ファースト」という言葉が強くなっている。今回の札幌開催はどうだろうか。アスリートたちの声はIOCやIAAFに届いているのか。4年に1度の夢舞台を本気で目指してきた選手たちへのリスペクトを忘れてはいけない。