反緊縮の目的は経済成長を安定化させ、それによって雇用や所得を改善することにある。れいわでは「全国一律! 最低賃金1500円『政府が補償』」を主張している。しかも、中小企業が最低賃金を支払えない場合、不足分を政府が補塡(ほてん)するという。

 中小企業の従業者数は約3200万人、全国平均の最低賃金が901円である。また、パートを除く一般社員の労働時間の年間平均はだいたい2000時間である。

 あくまで仮定の話だが、中小企業が1500円の最低賃金を全従業員の全勤務時間に対して901円以上支払えないとすると、政府の補填は年間約38兆円になる。政府の2019年度一般会計の規模が約100兆円なので、3分の1超に達する金額だ。もちろん極端な計算ではあるが、いずれにせよ、かなりの金額を恒常的に支出する羽目に陥るのではないか。

 れいわでは、デフレ対策は別の「デフレ脱却給付金」政策が割り当てられているので、この最低賃金補償政策は別のものになる。さて、こんなに恒常的に発生する膨大な財政支出をどう考えるべきだろうか。

 まず考えられるのが、高いインフレが発生する可能性があるのではないかということだ。デフレを脱却した上で完全雇用を達成させるわけだから、国債の利子率もそこそこ高い水準になっているだろう。

 高インフレが利子率をさらに押し上げて民間投資を圧迫し、それが企業活動を低迷させ、さらに最低賃金を払えない企業を増やし、いっそう政府支出が増えてしまい、それがさらに…という悪循環になりはしないか。

 では、財源を国債発行ではなく、大企業課税で賄った場合どうなるだろうか。大企業にも従業員が1400万人ほどいるが、その人たちが大企業の課税によって職を失う可能性がありはしないだろうか。「企業を罰して、庶民を助ける」左派的思考のドツボにハマっている人たちがわりと多いが、企業経営と雇用は密接に連動しているのである。

 むしろ、緩やかなインフレの中で、無理なく最低賃金を引き上げていく方が経済への負担は少なくて済む。どうしても所得に連動させたいならば、最低賃金水準を目的化するのではなく、年間3~4%を目標とするマクロ的な名目所得成長率ターゲットの方がいいだろう。

 このように、現段階のれいわの経済政策は悪い意味でのポピュリズム(大衆迎合主義)に思える。いずれにせよ、野党陣営にはより実現性があり、国民全般に寄与する経済政策の立案を求めたい。
2019年8月1日、国会で記者会見するれいわ新選組の(左から)舩後靖彦氏、山本太郎代表、木村英子氏
2019年8月1日、国会で記者会見するれいわ新選組の(左から)舩後靖彦氏、山本太郎代表、木村英子氏
 与党の中でも、世耕弘成参院幹事長が座長を務める参院自民党の勉強会を立ち上げ、「アベノミクス」の強化に向けて動くという報道もある。本当に強化する方向ならば、筆者は歓迎したい。

 最近、経済ジャーナリストの田村秀男氏が指摘したように、日本の保守主義は伝統的に経済成長を志向していたのが、今は経済成長を軽視する「空っぽの保守主義」に堕しているとの厳しい批判がある。安倍政権もそうだが、ポスト安倍を担う勢力が本当に「空っぽ」かどうか、消費増税以後も日々問われていることを忘れてはならない。