そもそも、『世界』は掲載論文に大韓民国(韓国)という用語を使わせず、84年10月号まで「南朝鮮」と表記させた。明らかな韓国蔑視だが、「韓国という国は存在しない」という北朝鮮の主張に従ったものである。

 エピソードでも分かるように、日本人の心の底にある「韓国・朝鮮人蔑視」の感情を、『世界』が韓国人にだけ向けさせたと韓氏は指摘する。だが、同誌から反省の言葉は聞かれない。

 韓国蔑視、北朝鮮礼賛の「呪縛」から解放されたことで、ようやく日本での論調が変化した。常識的な日本人は「南朝鮮」の表記や「日本人拉致はない」という一連の主張に疑問を感じていたのだ。

 反韓親北の運動を展開した雑誌の部数が激減し、保守論調の雑誌が部数を拡大した現実がそれを物語っている。一部の主張には過激で理解不足も見受けられるが、呪縛からの独立が生んだ反動であり、やがて正常化していくだろう。

 このように、朝鮮半島問題の真実は、日本人の心の底にある「差別意識」を南北朝鮮の当事者双方が利用し、敵対する相手に向けさせた「運動」と「工作」の歴史にある。つまり、北か南か、どちらかの「旗振り役」にさせる運動と工作が展開されてきた。

 この構図は「(日本文化人による)日本的オリエンタリズム」だといえる。「オリエンタリズム」はパレスチナ出身の批評家、エドワード・サイードが解明した欧米によるイスラム蔑視の理論である。

 韓国の革新勢力は、すなわち北朝鮮支持者たちである。徴用工判決の背後には、北朝鮮を支援する日韓左派の「運動協力」がある。

 米コロンビア大のキャロル・グラック教授によれば、日韓対立は「記憶の戦争」であって、真実の解明ではないという。徴用工判決は「日本の植民地支配は違法であった」ことを法的根拠にしたが、日韓併合条約は大韓帝国皇帝が自ら決断したもので合法であると、多くの国際法学者が認めている。
約1年ぶりとなる会談を前に握手を交わす韓国の李洛淵(イナギョン)首相(左)と安倍晋三首相=2019年10月24日、首相官邸(春名中撮影)
約1年ぶりとなる会談を前に握手を交わす韓国の李洛淵(イナギョン)首相(左)と安倍晋三首相=2019年10月24日、首相官邸(春名中撮影)
 現在の日本国民が「朝鮮の植民地化はよくない」と反省している事実は、韓国では理解されない。戦後の日本人が変わった事実すら認めない。日本国憲法の掲げる「平和主義」も知られていない。

 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に尽力した加藤康子元内閣官房参与は、元工員や鉱夫の証言を地道に集め、嘘の証言を検証しながら真実を解明するという、気の遠くなるような仕事に取り組んでいる。それでも、ウェブサイト「軍艦島の真実―朝鮮人徴用工の検証」でも見られる加藤氏の成果は、韓国人に理解されることはないのである。