2019年11月01日 12:25 公開

ドナルド・トランプ米大統領は10月31日、イギリスのラジオ番組に電話出演し、ボリス・ジョンソン英首相の欧州連合(EU)離脱政策を批判した。イギリスが新たな離脱協定案に基づいてEUを離脱すれば、英米間の将来の通商が妨げられるとしている。

トランプ氏は、イギリスのラジオ局LBCでブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首と対談。ジョンソン氏の離脱協定がない方が、両国は今より「何倍もの取引」ができると話した。

また、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首について、12月の総選挙で政権を握っても「とても悪い」首相になるだろうと語った。

これに対しコービン氏は、トランプ氏が「友人のボリス・ジョンソン」を守るため、イギリスの総選挙に「介入しようとしている」と批判している。

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イギリスとEUは先に、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の期限を2020年1月31日まで延期することで合意した。

ジョンソン首相は協定をイギリス議会で承認するには解散総選挙が必要だと訴え、12月12日に総選挙を行う法案を提出。すでに上下両院を通過し、総選挙が決まった。

法案はエリザベス女王の裁可を経て、正式に法律となる。

「貿易ができない協定だ」

かねてブレグジットに賛成しているトランプ大統領は今年8月、イギリスと「とても大きな貿易協定」を結ぶと約束。また、イギリスを失ったEUは「錨(いかり)を失ったようになるだろう」と話していた。

しかし、友人でもあるファラージ氏とのラジオ対談では、ジョンソン氏の離脱協定案への批判を展開した。

「アメリカはイギリスと貿易がしたい。イギリスもアメリカと貿易がしたい。でも正直に言えば(中略)この協定のある側面を見ると(中略)それができない。それができない。貿易なんてできない」

「我々は今よりも何倍もの取引ができるし、もりろんEUの中にいるよりももっと大きな数字にできるのに、(この協定では)イギリスと貿易協定を結べない」

イギリスの首相官邸はトランプ氏の発言に対し、ジョンソン首相のEU離脱協定によって「イギリスは法律や貿易、国境、財政の主導権を取り戻せる」と説明した。

「新しい協定案ではイギリス全土がEUの関税同盟から離脱するため、世界中と個別に自由貿易協定を結ぶことができ、その恩恵をイギリス全土が受けられる」

首相とファラージ氏は「協力すべき」

一方でトランプ氏は、ジョンソン首相を「今まさに必要な人材だ」と評価した。

さらに、ファラージ氏とジョンソン氏はイギリス政界に「誰にも止められない勢力」を作るために「協力」すべきだと語った。


半面、コービン労働党党首については、「彼は国のためにならない。本当に悪い。イギリスをとても悪い方向に、とても悪いところに連れて行くだろう」と語った。

「でもイギリスにはものすごい可能性がある。素晴らしい国だ」

ジョンソン首相は次の総選挙に向け、一刻も早くブレグジットを実現すると語っている。一方、コービン党首はEU離脱の是非を問う2度目の国民投票を公約に掲げている。

コービン氏は労働党の選挙活動始動にあたり、EU離脱後に結ぶ英米貿易協定では、アメリカ企業がイギリスの国民保健サービス(NHS)へのアクセスを拡大し、イギリス国民の税金から利益をあげてしまうと警告した。

その上で、ジョンソン首相の離脱協定案は「NHSの資金をさらに患者から吸い上げ、株主に手渡すものだ」と批判している。

これについてトランプ氏は「そんなことはない。(NHSには)関わろうともしていない」と、コービン氏の主張を一蹴した。

「イギリスの保健システムについてどうこうする気はない。ちがう、ただ貿易の話をしているんだ」

コービン党首はツイッターでこの発言に言及し、「ドナルド・トランプは友人のボリス・ジョンソンを勝たせるためにイギリスの総選挙に介入しようとしている。6月にNHSが『協議の対象』だと言ったのはトランプだ。彼は労働党が勝てばアメリカ企業がNHSに手を付けられないことを知っている。NHSは売り物ではない」と反論した。

https://twitter.com/jeremycorbyn/status/1189965486638981121



<解説>トランプ大統領の選挙介入 ――ジェシカ・パーカー、BBC政治担当編集委員

国家の首脳は他国の選挙や投票に介入しないというのが外交の常識だ。

しかし、アメリカの大統領が大西洋を越えて口を出してくるのは、もちろんこれが初めてのことではない。

2016年のEU離脱をめぐる国民投票の際、バラク・オバマ前大統領は、EUを離脱すればイギリスはアメリカが通商協定を結ぶ「最後の国」になるだろうと話した。

トランプ氏は今年6月、保守党党首選について自らの所感を話している。

そして今回、さまざまな話題におよんだ対談で、トランプ大統領はジョンソン首相の離脱協定案やコービン党首の首相としての資質について語った。

しかし、コービン党首は対談の関連ツイートに軽く言及したものの、それほど怒っていないようだ。

実際、コービン氏はトランプ氏と距離を置くことを善しとしている。トランプ大統領は社会主義の看板にはならないからだ。

ジョンソン氏の離脱協定案と英米貿易協定のあり方についての発言は、イギリスの首相官邸をやきもきさせているかもしれない。

しかし、トランプ氏は具体的にどこに困難が生じるのか詳細を語らなかったため、多くは謎に包まれている。


(英語記事 Trump criticises Johnson's Brexit deal