2019年11月04日 11:27 公開

ルーシー・ウィリアムソン、BBCパリ特派員

イギリス東部エセックス州でトラックのコンテナの中から遺体で見つかった39人について、地元警察は全員ヴェトナム人とみて、家族やヴェトナム当局と連絡を取るなどして捜査を進めている。死亡したとみられる人々の写真や記録からは、彼らがフランスにいた形跡が浮かび上がってくる。

例えばヌエン・ヴァン・フンさんが最後に目撃されたのは仏南部のマルセイユで、パリに向かおうとしているところだった。

ヴェトナムにいるヌエン・ヴァン・フンさんの父親は、トラックがイギリスに到着した直後、ヴェトナム時間の午前7時に「業者」から電話がかかってきたと私たちに話した。

内容は、間もなくヌエン・ヴァン・フンさんから電話がかかってくるから、その後に1万ポンド(約140万円)を支払えというものだった。

しかし、電話はかかってこなかった。ヌエン・ヴァン・フンさんの父親は電話をかけ直したが、すでにその電話番号は使われなくなっていた。

ヌエン・ディン・ルオンさんも、過去18カ月をフランスで過ごした。パリのレストランで働いていたという。10日前、ヌエン・ディン・ルオンさんはヴェトナムの親族に電話をかけ、イギリスへ渡るつもりだと伝えた。

ヌエン・ディン・ルオンさんの父親は、彼を止めようとしたという。

ヌエン・ディン・ルオンさんはそのまま行方不明となっている。先週、当局の医師が血液サンプルを取りに家族のもとを訪れた。

先週、ベルギー・ゼーブルージュから同じような経路をたどってロンドンに来たというヴェトナム人男性は、39人の犠牲者のうち12人を知っていると話した。

匿名希望のこの男性はフェイスブックを通じた取材で、「私は39人が亡くなる前日にイギリスへ向かって旅立った」と説明した。


「私が乗ったトラックには7人が乗っていた。冷凍コンテナではなく、呼吸にも問題がなかった」

この男性はヴェトナムからまずロシアに渡り、倉庫で1カ月を過ごした。その後、森を横断してドイツに入り、フランスへたどり着いたという。

「イギリスには仕事を求めてやってきた。でも今はショックを受けて何もできない」

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密入国・密輸ネットワークにとって、フランスはボトルネックだ。

ドイツやベルギー、ポーランドからフランスまでの道のりは楽なものの、フランスからイギリスへ渡るのは、はるかに困難だという。

ヴェトナム人の人身売買に詳しい、フランスのティ・ヒエプ・ヌエン氏は、「発着場は常に変わる」と説明した。

「ベルギーやドイツから直接イギリスに行くトラックを見つけたほうが、パリを避けられるので簡単だ。しかしその道を選べるのは最も裕福な密入国者だけだ」

ヒエプ氏が密入国ネットワークを取材した際、2012年にフランスで逮捕されたあるヴェトナム人のあっ旋業者は、密入国者が支払った代金はパリの「強力なボス」のところへ行くと話していた。

「彼らはパリだけではなくあらゆるところにいる」とヒエプ氏は話す。

「イギリスを含む欧州各国にこうしたボスがいる。特にパリにはたくさんいる。常に居場所を変えているが、大体は南側の郊外にいる」

警察には時折、人身売買に使われている宿についての情報が入ってくる。

フランスメディアは昨年、パリ近郊ヴィルジュイフの建物に、ヴェトナム人移民24人が閉じ込められているのが発見されたと報じた。このうち22人が女性か未成年だったという。

彼らは、割高な密入国の道が選べなかった人たちだという。

彼らは大金をもっていなかった。代わりに、自分たちの命を差し出すことになってしまった。

(英語記事 The deadly people-smuggling trail leading to France