不思議なことに、これは米軍だけではなく、自衛隊にも要請しなかったようだ。実は、県庁と県内にある自衛隊、特に陸上自衛隊第15旅団は、期待するほどの関係ができていない。それは、『防衛白書』からも読み取ることができる。その中に「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」という一覧がある。

 全国でほとんどの都道府県や地方自治体で、元自衛官の幹部が防災の専門家として再就職するが、反軍、反基地、反自衛隊の思想を持つ沖縄県は、元自衛官を採用していない。県内で、今年6月30日の時点で退職自衛官を採用しているのは豊見城市のみだ。その結果、県は重要な情報共有、意思疎通ができないだけでなく、速やかに出動などの協力の依頼もできない。

 今回の火災の拡大の背景には、こうした事情があると思われる。「危機管理」は、近年よく使用するようになっている4字熟語だが、行政をはじめ、組織や会社が最も重視すべき仕事だ。

 これから、首里城の消防体制など多くの内部告発が出ると思う。なぜなら、沖縄県の政治・行政の改革だけではなく、国や他の都道府県などの文化財の保全のあり方の改善につながるからだ。

 3年前に、拙著の『オキナワ論』(新潮新書)で、「NOKINAWA」という新しい言葉を発表した。「『ノー』としか言わない沖縄」を意味するが、主張主義によって国と対立やけんかをし、自衛隊や米軍と距離を置き、批判している沖縄県庁は果たして150万人の県民をはじめ、日本国民のことを考えているのか、常に疑問を持っている。

 以前にも提案しているが、こうした状況を改善するために、在日米軍と県庁は、互いに連絡官(liaison officer)を置くべきだ。少なくとも、県庁の職員を、筆者が務めたキャンプフォスター(在沖海兵隊司令部)内にある、4軍調整官の事務所に派遣し、連絡・協力体制を強化すべきだと思っている。

 今後も、緊急的に連絡を取る必要がある事案(事件・事故、災害など)が考えられるので、このような緊密関係を構築し、沖縄県の危機管理を向上することができれば、今回の火災という「不幸中の幸い」が生まれるかもしれない。

 しっかりした体制に加え、リーダーシップが重要である。昨年8月の翁長雄志氏の突然の死去に伴う選挙で選ばれた玉城デニー沖縄県知事は、火災の1カ月前の9月30日に、就任1周年を迎えたが、県内では評判が高くない。

 特に、日本本土をはじめ、国外の出張が多く、県知事の仕事が疎かになっているのではないかとの疑念もある。特に今年、台風などの被害が多く、災害における危機管理が既に問われ、「不在の知事」とまで言われている。
首相官邸を訪れ菅官房長官(右)と握手する沖縄県の玉城デニー知事=2019年11月1 日
首相官邸を訪れ菅官房長官(右)と握手する沖縄県の玉城デニー知事=2019年11月1 日
 来月で23年も経過している普天間飛行場の県内移設で国との対立が続いている中、沖縄県は、10年おきに策定する政府による沖縄振興策に向けて40ページに及ぶ要望書を政府に提出しているが、その矛盾が県内外で指摘されている。

 首里城の火災は行政の無策による「人災」と言っても過言ではない。この悲しい事件を乗り越え、再建することをはじめ、より長いスパンで政府との信頼ある関係をつくることも求められる。玉城知事にその力があるのかは、過去一年間を見る限り、疑わしい。しかし、国民をはじめ、在沖米軍など外国人の沖縄を愛する人たちは、首里城の再建と沖縄の再発展を応援しているに違いない。