澤田哲生(東京工業大先導原子力研究所助教)

 10月16日、外務省の滝崎成樹アジア大洋州局長と、韓国外務省の金丁漢(キム・ジョンハン)アジア太平洋局長との協議がソウルで行われた。局長協議で滝崎氏は、懸案となっている「元徴用工」訴訟を巡り、日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判決以来続く国際法違反の状態を是正するように求めた。

 日韓間の懸案は徴用工訴訟や輸出管理問題にとどまらない。思うような進捗が見られない韓国は焦りからか、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水浄化後の処理水にまで口を挟み、国際問題化しようとしている。

 しかし、それは科学的に見て正しくないばかりか、自らの足元で何が起こっているかも顧みない「とんでもないお門違い」に他ならない。韓国側が「非建設的な問題提起」を行っているとして、滝崎氏が適切な対応を求めたのも当然である。

 ところが、新任の環境相の言動を契機に、処理水問題は「非建設的な問題提起」を臆面もなくする韓国を利するような展開を見せ始めた。

 韓国のお門違いの発端は、韓国外務省が8月19日、在ソウル日本大使館の公使を呼びつけ、福島第1原発にたまり続けている放射性物質、トリチウムを含む処理水の海洋放出について説明を求めたことにある。以来どういうわけか、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、福島第1原発で増え続ける処理水にターゲットを定めたがごとく、事あるごとにトリチウム処理水の海洋放出への懸念を表明している。

 特に9月16日、オーストリア・ウィーンで開催された国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、韓国から非科学的極まりない嫌がらせ発言が飛び出した。科学技術情報通信省の文美玉(ムン・ミオク)第1次官が処理水問題に言及し、「(海洋放出されれば)日本の国内問題ではなく、世界全体の海洋環境に影響を及ぼしうる重大な国際問題となる」と強調したのである。
ソウルの日本大使館近くで、放射性物質の危険性を挙げて東京五輪のボイコットを訴える集会参加者ら=2019年8月(共同)
ソウルの日本大使館近くで、放射性物質の危険性を挙げて東京五輪のボイコットを訴える集会参加者ら=2019年8月(共同)
 今、世界では400基以上の原子力発電所が稼働している。発電所のほかにも、使用済み燃料の再処理施設といった関連施設もある。これらの原発からは日常的に、トリチウムが大気中や河川、海洋に放出されている。それ以前に、トリチウムは大気圏で自然の作用によって日々発生している。

 お隣の韓国のお門違いで非建設的な言動の根本には「非科学的な認識」がある。何が非科学的かというと、それはあまりにも露骨な事実だからである。