2019年11月07日 12:27 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾調査を進める米下院は来週、初の公聴会を実施する。下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)が6日に発表した。

シフ委員長は記者団に対し、「我々は、昨年1年間にわたって起きたこと、そしてトランプ大統領が、ウクライナ側に自分の政敵のスキャンダルをかき集めさせるため、いかにすべての米政府機関を巻き込んだか、その理解をますます強めている」と述べた。

ウクライナ疑惑をめぐる下院委員会での証言はこれまで非公開だったが、下院が正式に弾劾調査を開始したことで、民主党は証言記録の公開を始めている。公聴会の様子は今後、テレビ中継されることとなる。

来週行われる初の公聴会では、国務省高官3人が証言する予定。

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トランプ氏は今年7月にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー氏と電話会談をした際に、来年の大統領選で対決する可能性があるジョー・バイデン前米副大統領(民主党)とその息子への捜査を求めたとされる。

この電話内容に「深刻な懸念」を抱いた情報機関の内部告発者が、情報機関監察総監に懸念を伝え、民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長が今年9月、弾劾調査を正式に開始すると発表した。

トランプ氏は、2016年当時に副大統領だったバイデン氏と、息子でウクライナのエネルギー企業ブリスマの幹部だったハンター氏について、政治的取引や商取引で汚職を働いたとして非難しているが、証拠は示していない。バイデン氏は疑惑を否定している。

初の公開証言へ

来週の公聴会に臨むのは、国務省高官3人。13日には駐ウクライナ臨時代理大使のウィリアム・テイラー氏とジョージ・ケント国務次官補代理が、15日にはマリー・ヨヴァノヴィッチ元駐ウクライナ大使の3人が証言する予定。

テイラー大使は、ウクライナ疑惑をめぐり最も衝撃的な証言をした1人。テイラー氏は先月、下院監視・政府改革委員会で、大統領が自分の政敵への捜査着手を軍事援助の条件にしたことは、アメリカとウクライナの関係を「根本的に損ねた」と非公開の聴聞会で証言した。

ケント国務次官補代理は、ホワイトハウスが政治任用者にウクライナ政策を任せ、国務省幹部は脇に追いやられていたと証言したと報じられた。

ケント氏は、バイデン親子への捜査をウクライナ側へ働きかけたトランプ氏の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ氏への懸念を表明した後、上官から「おとなしく」するよう警告を受けたと証言した。

ホワイトハウスからの信頼が失墜したヨヴァノヴィッチ元駐ウクライナ大使は、今年5月に予定より早くウクライナを離任した。

ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、「彼女(ヨヴァノヴィッチ氏)は苦労することになる」とのトランプ氏の発言に脅威を感じたと、ヨヴァノヴィッチ氏は先月、証言した。

初の公聴会を1週間後に控える中、下院民主党は6日、トランプ氏がウクライナ側に4億ドル分の軍事援助の停止をちらつかせていたとする証拠を公開。テイラー氏は、トランプ氏が軍事援助の停止を示唆したのは、ウクライナ側にバイデン親子の捜査をさせるためだったと「明確に理解」していたと証言したという。

弾劾手続きとは

合衆国憲法第2条第4節は、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と規定している。

弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院がそれぞれ持つ。下院が調査の後に単純過半数で弾劾訴追を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立に必要な3分の2以上の賛成票を得るには、多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

その一方で、トランプ氏を支持してきた共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は30日、もし下院が大統領を訴追した場合、上院としては規則上、弾劾裁判を開かないわけにはいかないと表明した。

過去の大統領で弾劾されたのは、アンドリュー・ジョンソン第17代大統領とビル・クリントン第42代大統領のみだが、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump impeachment hearings to go public next week