片岡亮(ジャーナリスト)

 お笑いコンビ、チュートリアルの徳井義実が10月26日に活動自粛を発表した。3日前の23日、国税庁が徳井の約1億2千万円の申告漏れと、約2千万円の所得隠しを発表、3700万円の追徴課税を受けた対応だった。

 問題発覚直後の記者会見では「できれば仕事を続けさせてもらいたい」と語っていたが、徳井の希望が叶いそうにないことはすぐに明らかになる。26日、所属事務所の吉本興業が公表した詳細な経緯で、10~12年、13~15年の各3年間も期限内に申告せず、3年分をまとめて申告していたことが判明した。

 税務署からの再三の督促にも応じないばかりか、16年には銀行預金を差し押さえられたことや、徳井が個人会社「チューリップ」を設立したときに社会保険の加入手続きもしていなかったことで、さらに世間の厳しい声が広がった。

 「想像を絶するだらしなさ」という発言に象徴された徳井の記者会見を要約すると、「16~18年の申告をしていなかった。ルーズで先延ばしにして、税理士にも資料を催促されていたが、納税意識が低かった」というものになる。大金を稼げるテレビ番組への出演はたくさんあってもすっぽかさないのに、年に1度の納税はほったらかし、というのは「だらしなさ」を余りに都合よく使い分けていたと言われても仕方がない。とても「ルーズだったのだから仕方ないね」と世間に納得できる弁明ではない。

 たが当初は、一部のワイドショーで、司会者やコメンテーターらが「悪意はなく、単にだらしなかったんだろう」という「ストーリー」で徳井をフォローする姿勢を見せていた。これは、おそらく出演番組の出演自粛や降板といった「損失」を抑えたいというテレビ局の意向が働いたものだと思う。

 一方、ナインティナインの岡村隆史がラジオで「テレビでは所得隠し、脱税みたいなことになってるけど、本人にそういうつもりはなかったと思う」と述べたり、ハリセンボンの近藤春菜は「会見にウソはないと思う。本当にルーズでここまできてしまった」と言及していた。同じ事務所の芸人仲間の言葉は、納税問題というより、徳井個人の人間性に焦点を当てたものだといえる。

 しかし、これは社会に損失を与える案件であって、人間性の議論で治まる話ではない。だから、社会システムの観点でいえば、国税局が適切な判断をして、本来納めるべき税金を回収したわけだから、この時点で問題は落着しているはずだ。

個人会社の申告漏れなどで会見をするチュートリアルの徳井義実=2019年10月(須谷友郁撮影)
個人会社の申告漏れなどで会見する
チュートリアルの徳井義実=2019年10月(須谷友郁撮影)
 ツイッターで国税当局の忖度(そんたく)や無申告に対する問題点を指摘したある実業家と比べて、「徳井が逮捕されないのはおかしい」などという論調も一部であった。ただ、徳井の事案を刑事処分とするかは刑法に沿って検討されなければならない。

 脱税で有罪判決を受けたこの実業家の場合、「架空の広告宣伝費を計上していた」という犯罪構成を強く認められる点があったからだ。洋服代や旅行費用を経費として計上していた徳井のケースと多少温度差があるのは否めない。

 とはいえ、この社会上の処分で済まなかったのが芸能活動だ。NHKを含め、テレビ局はできる限り事なき方向に持っていこうとしたが、「ルーズな性格で納税できなかったんです」という弁明では、社会的制裁は止められなかった。