この認識は、筆者がかつて在籍したプロレスの世界も似ている。両国国技館の興行で、東西南北の座席にそれぞれ愛人を座らせたことを自慢していた有名レスラーが先輩にいたが、罪悪感などまるでなく、むしろ舞台裏で武勇伝としてひけらかすほどだった。このレスラーは大相撲出身だったので、既に力士時代からそういう価値観があったことも伺えた。

 後輩に動物のモノマネをさせてエアガンで撃ったり、地方興行の宿泊先で仲居をトイレに連れ込んだり、「ファンの女性と次々関係を持ってたら、後楽園ホールの最前列に6人も座っていた」といった話が控室で交わされていたのは、そこに「プロレスラーはヤンチャでいい」という価値観があったからだ。「仲間で大酒を飲んで大暴れして、居酒屋1軒をぶっ壊した」なんていう話も、当時は武勇伝にさえならなかったが、現代なら大ヒンシュクを買って、インターネットで即炎上しそうな話だから、時代が変わったという考察もできる。

 過去、筆者が出演していたバラエティー番組で、レギュラー司会者が不在の際、徳井とともにコーナー進行役として収録に臨んだことがある。残念ながら諸事情でカットされて放送されることはなかったが、アドリブをあまり挟まずにキビキビ進行していた司会者と違って、徳井との掛け合いからは柔らかさを感じた。

 高い集中力が求められ、テレビの印象よりも神経質な芸能人も少なくない中で、柔らかさは徳井の持ち味でもあったともいえる。ただし、その柔らかさがルーズさにつながったのか、当時の楽屋では節税やカネの話題でもちきりだった。事実、「徳井さんが自分の会社を作った」ことは7年ほど前から既に舞台裏で伝わっていた話だ。

 口八丁手八丁で抜け目のない人間が多い芸能人にとって、関心が最も高いのがカネの話というのは、当然というべきか。財テクに長(た)けていることで有名だった島田紳助が現役だったころ、「紳助さんはこうしてるんだって」という話を若手芸人の口から何度聞いたことか分からない。

 徳井が会見で、節税対策の個人会社を作ったきっかけを「いろんな人からアドバイスされた」と言っていたが当然の話で、ブレークすれば節税の話が耳に入ってくる。過去のラジオ番組で「将来は税金のかからないドバイに移住したい」などと突拍子もなく言い出したのも、誰かの受け売りだろう。

2011年8月、会見で芸能界引退を発表する島田紳助(桐山弘太撮影)
2011年8月、会見で芸能界引退を
発表する島田紳助(桐山弘太撮影)
 実際、筆者が昨年、マレーシアにオフィスを持ってから聞こえてきたのが「海外に資金を逃がしている芸人」の話だ。「仲間の金を動かしていたけど、最近は世界中の銀行間で口座情報を共有するCRS(共通報告基準)制度の導入で、国税が対策をとるから、より巧妙な手口を取るつもり」。そんな話が舞台裏には転がっている。

 こうして、世間が芸人に甘い空気を作っていた中で、徳井よりも資産を巧みに逃している芸人がいるわけだ。それは結局、大手企業もやっているセレブたちの常套(じょうとう)手段なのだろう。

 だが、そういう話を聞くと、ズルい方法を「見つけたもん勝ち」という中で、楽に見つかっちゃったマヌケだけが仕事を失ったという気もしてくる。テレビタレントたちは決して表舞台では言わないが、ほとんどが内心「ああ、もっとうまくやる方法があるのに…」と思っていたに違いない。