2019年11月12日 12:24 公開

英ブレグジット党は11日、12月12日に行われる下院(定数650)総選挙で、与党・保守党が議席を持っている317選挙区に立候補者を立てない方針を明らかにした。これにより、両党は事実上の共闘態勢となる。

ブレグジット党はイギリスの欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を掲げて今年1月に発足したばかりで、下院に議席を持っていない。一方、5月に行われた欧州議会選挙では得票率30%と大きく躍進した。

同党のナイジェル・ファラージ党首は、最大野党・労働党はEU離脱派の有権者を「裏切った」と批判し、労働党の議席を狙うと述べている。

ファラージ氏は当初、「離脱同盟」をボリス・ジョンソン首相に持ちかけたが、これを断られたため、600選挙区で候補を擁立する方針だった。しかし、それは離脱派の票を割ることになると、圧力を受けていた。

ジョンソン首相は、他党との取引に応じれば、労働党の勝利につながる危険があるとして、「離脱同盟」の形成を拒否していた。

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イングランド北東部ハートルプールで取材に応じたファラージ氏は今回の決定について、ジョンソン首相がブレグジット対応で「大きく姿勢を変える」と示唆したことを受けたものだと説明。

ジョンソン氏が、EU離脱後に設けられる移行期間を延長しないと約束したこと、離脱後の通商協定でEU法から遠ざかる方針を示していることなどを理由に挙げた。

特に通商協定の方針については、テリーザ・メイ前首相が計画していたものから「大きな変化」があったと話している。

ファラージ氏は、保守党と「離脱同盟」を形成しようと「本当に努力」したのだが、「今ではある意味で、離脱同盟ができあがった。ただ単に、我々が一方的にそれを実現したというだけだ」と述べた。

イギリスは10月31日にEUを離脱する予定だったが、議会で離脱協定案とそれを法制化するための協定法案の審議が行き詰まり、ジョンソン首相はEUに離脱延期を要請。EUとイギリスは新たな離脱期限を2020年1月31日とすることで合意した。

議会はその後、ジョンソン首相が提出した解散総選挙法案を可決。選挙戦はブレグジットが焦点になるとみられている。

党内からは失望の声も

一方、保守党と議席を争う予定だったブレグジット党の立候補者からは、ファラージ氏の決定に失望の声が上がっている。

エセックス州ハーロウで出馬予定だったニール・グリーヴス氏はAP通信の取材で、ファラージ氏は「ブレグジット派をおとしめた」と非難。無所属候補として同選挙区に出馬する方針だと述べ、他のブレグジット党立候補者にも同調を呼びかけた。

ノッティンガムシャー州マンスフィールドで立候補しているケイト・オールソップ氏も、この決定で「民主主義のために出馬する機会が奪われた」と語った。

なお、ファラージ党首は今回の選挙には出馬せず、党運営に注力する方針を明らかにしている。

「トランプ同盟」

ジョンソン首相はファラージ党首の決定を歓迎し、「ブレグジット実現にはひとつの道しかないこと、それは保守党に投票することだという認識を得られた」と話した。

一方、労働党のジェレミー・コービン党首は、今回の発表によってドナルド・トランプ米大統領が「希望をかなえた」と批判。ファラージ氏はジョンソン氏と共に「トランプ同盟」を作ろうとしており、その結果として国民保健サービス(NHS)が脅威にさらされると指摘した。

トランプ大統領は先にファラージ党首のラジオ番組に出演し、ジョンソン首相との共闘を勧めていた。またEU離脱後の通商協定について、アメリカ企業のNHS参入を示唆している。

自由民主党のサー・エド・デイヴィー副党首は、ファラージ氏の決定によって「保守党とブレグジット党が同一のものだということが分かった」と話した。

自由民主党と緑の党、ウェールズ党プライド・カムリは、イングランドとウェールズの60選挙区で立候補者を調整する共闘体制で合意している。対象となる選挙区では、3党のうち1党が立候補者を立てることで、票の分散を防ぎたい考えだ。

スコットランド国民党(SNP)のニコラ・スタージョン党首は、今回の件で保守党は「実質的にブレグジット党になった」と話し、「ますます過激で右翼になっているボリス・ジョンソンの党に過半数を取らせない」ためにはスコットランドで保守党を大敗させる必要があると語った。

(英語記事 Brexit Party rules out standing in Tory seats