
2019年11月12日 13:24 公開
メキシコのマルセロ・エブラルド外相は11日、大統領選での不正疑惑を受けて前日に辞任表明したボリビアのエボ・モラレス大統領の亡命申請を、「人道上の理由から」受け入れると発表した。
エブラルド外相はこの日、記者会見で、「数分前にボリビアのエボ・モラレス大統領から私に電話があり、口頭で正式に我が国への政治亡命の要請があった」と明かした。
「オルガ・サンチェス・コルデロ内相が、モラレス氏の亡命を認める判断を下した」
前々からモラレス氏を支持
メキシコの左派のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール政権は、以前からモラレス氏を支持。
エブラルド外相はモラレス氏の辞任にボリビア軍が関与したことから、ボリビアでのデモは「クーデター」だと述べていた。
これまでのところモラレス大統領はコメントしていない。
上院副議長が暫定大統領に
ボリビアではモラレス氏のほか、アルバロ・ガルシア・リネラ副大統領とアドリアナ・サルバティエラ上院議長、ヴィクトル・ボルダ下院議長も辞任した。
そのため、新たな選挙が実施されるまでの間、ヘアニネ・アニェス上院副議長が暫定大統領を務めるという。
アニェス氏は、「この困難には新たな選挙を求めるという唯一の目的があると考える。これは移行段階にすぎない」と述べた。
モラレス氏が率いた社会主義運動党(MAS)が過半数を占める上院・下院で、反モラレス派のアニェス氏が支持を得られるかは不明。
ボリビアの憲法では、暫定大統領に就任した者は、90日以内に新たな選挙を実施することになっている。
モラレス氏辞任の背景
10月20日に実施されたボリビア大統領選をめぐっては、開票結果が不正に操作されたとして、抗議デモが拡大。モラレス氏への圧力は高まり続けていた。
批判が最初に高まったのは、大統領選当日の夜だった。このとき、集計作業が不可解なことに24時間にわたり中断された。
当初はモラレス大統領と2位の中道カルロス・メサ元大統領との差は、当選条件の10ポイント以下だったが、最終的にモラレス大統領は10ポイントをぎりぎり上回り当選した。
開票結果を不正操作と
北米・中米・南米諸国の協力促進を目的とする米州機構(OAS)が10日、大統領選で「明らかな不正操作」があったことが判明したとして、開票結果の無効を求めたことで、事態が動いた。
モラレス氏はOASの訴えを認め、選挙管理機関を徹底的に見直したうえで、選挙をやり直すと発表した。
しかし、大統領選2位の中道カルロス・メサ元大統領は、モラレス氏はやり直し選挙に出馬すべきではないと述べた。
軍幹部も辞任を要求
ボリビア軍のウィリアムズ・カリマン最高司令官が、「事態の鎮圧と安定維持のために」辞任するようモラレス氏に求めたことで、情勢が変わったようだ。
モラレス氏は、社会主義の指導者が「嫌がらせや迫害、脅迫」を受けるのを止めるために辞任の決断を下したと述べ、デモ隊に対し「兄弟や姉妹への攻撃や、火をつけるなどの行為をやめる」よう求めた。一方、辞任に追い込まれたことについては、「クーデター」だと述べた。
モラレス氏はこれまで、支持者に対し、自分を退任へと追いやる「邪悪な力」に抵抗するよう求めていた。報道によると、支持者と警察の衝突で約20人が負傷したという。
モラレス氏はボリビア中部コチャバンバ県チャパレから辞意表明を行ったと報じられている。この地域は、コカ栽培が盛んで、MASの支持基盤。
国内外の反応
モラレス氏に反発していた人々は、花火を打ち上げたり国旗を振ったりして、各地で同氏の辞任を喜んだ。
一方で、ラパスやエル・アルトではモラレス氏支持者と警察が衝突したと、地元の複数メディアが報じた。
アルゼンチン・ブエノスアイレスでは、モラレス氏の辞任に反対するアルゼンチン人とボリビア人が道路を占拠した。
「民主主義にとって重要な瞬間」
モラレス氏の辞任をめぐる各国首脳の反応は様々だ。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は11日、「西半球の民主主義にとって重要な瞬間だ」と述べた。
ロシア外務省は、「反対派によって解き放たれた暴力の波」が、「エボ・モラレス氏の大統領権限を完全なもの」にはさせなかったと述べた。
「暴力的なクーデーター」
一方、モラレス氏支持を表明していたキューバのミゲル・ディアスカネル大統領は、「右派によるボリビア国内の民主主義に対する暴力的で卑怯なクーデター」だとツイートした。
ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、「我々は、我々の兄弟であるモラレス大統領に対するクーデターを断固として非難する」とツイートした。
社会主義国のニカラグアやヴェネズエラも、モラレス氏との連帯を表明した。
スペインは、「今回の軍の介入は、我々を中南米の過去の歴史へと引き戻している」と述べ、ボリビア軍の役割について懸念を示した。
モラレス氏とは
2006年に初当選したモラレス氏は、コカ栽培農家出身で、ボリビア初の先住民出身の大統領。
貧困問題に向き合い、ボリビア経済を改善したことで称賛を得てきた。
ボリビアの憲法裁判所が大統領任期の上限を廃止し、物議を醸す中で行われた先月の大統領選で、連続4期目の当選を果たした。
2016年の国民投票では、過半数が大統領任期の制限引き下げに反対していた。しかし、MASが任期の制限は人権違反だと訴え、憲法裁判所は任期の上限を廃止した。