上西小百合(前衆院議員)

 今、何かと問題が取り沙汰されている大阪市立天王寺動物園は、大正4(1915)年1月1日に開園した日本で3番目に長い歴史をもつ動物園で、面積は約11ヘクタール(甲子園球場の約3個分)の園内に、約200種1000点もの動物たちが飼育されている都市型の動物園である。

 最近、「天王寺動物園」という言葉を聞くとハラハラしてしまう。今度はどの動物がどんな目に遭ったのかと。
 
 今年11月3日にワライカワセミが逃げ出したことは記憶に新しいが、9月11日にはシマウマが事故死、同16日にアムールトラが原因不明の急死、同27日にアシカが行方不明になるなど、飼育動物の管理状態を疑問視せざるを得ない状況が連発しているのだ。

 私は大阪府で生まれ育ち、小中高を大阪教育大附属天王寺で過ごしたので天王寺動物園は家族や友人で行くほか、遠足などでも頻繁に出かけた思い出深い場所だ。私同様そんな大阪府民も多いのではないだろうか。

 天王寺動物園で多くの学びを得た子供たちも多いはずだ。「大阪府民の愛すべき場所ベスト3」に入っていてもおかしくないと、私は本気で思う。だが今、そんな以前の「楽しい憩い・教育の場所」というイメージが姿を消し、「事故多発動物園」へと変貌を遂げているのが非常に嘆かわしい。

 しかし、園長や飼育員の方々は昔から変わらぬ愛情を動物たちに注いでいるし、さまざまなアイデアで園の維持向上に懸命に努めている。原因は施設、備品の老朽化や人員不足などであろう。要は金(予算)が無いということだ。教育と大阪文化を背負う天王寺動物園がここまで追い込まれてしまう背景を考えねばならない。

 大阪維新の会が旋風(せんぷう)を起こした平成22年頃から当時大阪市長だった橋下徹氏は水道事業をはじめとする二重行政や天下り解消などコストカットを強力に進めてきた。しがらみのある誰かを雇用することが目的で府民の税金が無駄に支出されることなどは許されざることなので素晴らしい実績だ。

 ただ、橋下氏は「特別秘書」に自身の後援会会長の息子というしがらみだらけの人を税金で雇用するなど、「桜を見る会」で後援会関係者を招いたと報じられた安倍晋三総理や閣僚でさえ啞然(あぜん)とするほどに自分には寛容な人でもあるので、どこまでの信念があったのかは分からないが…。

 ただ、そのコストカットがじわじわと日本の歴史や大阪の文化にもやってきたことは胸が痛かった。財団法人「文楽協会」への補助金見直し騒動のとき、橋下氏は「劇団四季のライオンキングを鑑賞した。3時間の公演。面白かったし楽しかった」「文楽界はしっかりと学ばなければならない」などとツイートしていたが、全体を俯瞰(ふかん)する能力が欠如していると言わざるを得ない。
行方不明後、4日ぶりに園内の下水施設で発見されたカリフォルニアアシカのキュッキュ=2019年10月1日、大阪市天王寺区(柿平博文撮影)
行方不明後、4日ぶりに園内の下水施設で発見されたカリフォルニアアシカのキュッキュ=2019年10月1日、大阪市天王寺区(柿平博文撮影)
 例えば、伝統工芸の中にも時代の流れの中で技術の進歩により需要が少なくなってきて、職人がその収入だけでの生計が立てにくいものもあるが、それでも日本古来の伝統や文化を守るためにどれだけの人が歯を食いしばって努力をしていることだろうか。

 伝統工芸同様に外国から映画、音楽コンサートやテーマパークなどさまざまな娯楽が流入する中で、動物園の観客が減少することは当然のことだ。しかし、文化を守るためには後継者育成のための経費はこれまで同様に必要である。