平成25年9月に大阪維新の会のタウンミーティングにおいて、当時大阪府知事だった松井一郎現大阪市長が仁徳天皇陵の世界遺産登録について「宮内庁がどう言うかはあるけど、イルミネーションで飾ってみよう、中を見学できるようにしようと、いろんなアイデアを出して初めて指定される」と発言。隣に着席していた橋下氏もうなずきながら同意を示すということがあった。そうすれば観光客が増えて経済的利益も得られると松井氏は言いたかったのだろうが、天皇陵に電飾をつけるなど日本の歴史と天皇制を冒とくしていると感じざるを得ないし、度を越した拝金主義だ。

 お金だけでは考えられないものもあり、お金を支出してでも守るべきものがある。時代の流れの中で文化を守り、子供たちに継承していく教育環境を整備していくことは政治家の役割のひとつであろう。

 天王寺動物園について話を戻そう。私も幼い頃、祖母にもらった100円で買った餌のイワシをアシカがいるプールにもったいぶって投げ込んだのを覚えているが、昔から多くの子供たちにとって「生きるということは他の生物の命をもらっていることなのだ」といった多くのことを学ぶ場となっているのだ。

 ゆえに小中学生は入場料が無料だったのだが、橋下市政の中で、平成25年4月から大阪市外に住む小中学生は有料となってしまった。補助金を減らすために、関西でも有数の動物園を広く教育に使ってもらうことを止めてしまうというのは何とも寂しい気持ちになる。

 大阪市の経営で、大阪市民の税金で成り立つのだから大阪市民以外はお金を払えという理論は分からなくもないが、大阪市で線引きをしてしまうということは、維新のお題目である「ワン大阪」という大阪をひとつにする大阪都構想を目指す党として甚だ矛盾しているのだ。

 政府は増税分を教育・福祉にまわすとして、給付型奨学金や幼児教育無償化などと国民が「これで教育費は1円もかからないのだな」と勘違いしてしまうような、聞こえのいいキーワードを並べてはいるものの、実際は負担が増えたり、高齢者の社会福祉に多大なしわ寄せがきたりという事例も生じている。これがまさに大阪で維新がしていることも同様の張りぼてなのだ。

 維新議員たちは事あるごとに「大阪市営交通局ではトイレがきれいになりました」とアピールし、最近は大阪御堂筋線中津駅でライトアップ工事などを行っている。利用者はきれいになったと単純に喜んでしまいそうなのだが、見栄えだけを取り繕う前に安全性を高めるために一刻も早いホームドア設置などが優先されるべきだ。

 子供、高齢者や障がい者を思いやる気持ちが感じられない維新の張りぼてのまちづくりでは東京に追いつくことなど到底ないだろう。天王寺動物園も見栄えだけじゃなく、子供たちの教育や動物を管理する環境を最優先するべきだ。
天王寺動物園のヤギのメイちゃんらと記念撮影する橋下徹・大阪市長(当時・中央)=2014年12月26日、大阪市北区の市役所(村本聡撮影)
天王寺動物園のヤギのメイちゃんらと記念撮影する橋下徹・大阪市長(当時・中央)=2014年12月26日、大阪市北区の市役所(村本聡撮影)
 私は大阪市がここまで追い込まれた天王寺動物園にさらなる予算をねん出しないのは「天王寺動物園(博物館)なんてなくなってしまった方が金儲けになる」「動物園なんかより、観光客を呼び込めるIR(統合型リゾート施設)を誘致してお金にしようぜ」などと維新が考えているのではないかと危惧している。お金で買えないものだってあるんですけどね。政治家に必要なことは拝金主義ではなく、思いやりの気持ちです。