2019年11月16日 10:20 公開

ドナルド・トランプ米大統領は15日、自分に対する連邦下院の弾劾公聴会で前駐ウクライナ大使が証言する最中に、前大使を激しく攻撃するツイートを投稿した。その内容を聞かされた前大使や、弾劾調査を進める野党・民主党は、証人に対する威迫だと反発した。他方で同日には下院の非公開会合で国務省当局者が証言し、トランプ氏の捜査要請にウクライナは応じるようだと国務省幹部が発言するのを聞いたと述べた。

民主党が多数を占める下院の情報委員会はこの日、今年5月にトランプ政権に解任されたマリー・ヨヴァノヴィッチ前駐ウクライナ大使が証言した。トランプ氏が来年の大統領選に向けてウクライナ政府に支援を働きかけるなか、協力しない自分をウクライナ政府に対して批判していたことなど、大使は解任の経緯を説明していた。

テレビで生中継されたその証言の最中、トランプ氏はツイッターで、「マリー・ヨヴァノヴィッチが行く先々、どこもかしこも悪くなった。ソマリアを皮切りに、あそこはどうなった? そこから早送りしてウクライナだ。新しいウクライナ大統領は2度目の電話で、彼女のことを悪く言っていた。大使の任免はアメリカ大統領の絶対権限だ」と書いた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1195356198347956224?s=20


情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)が証言中のヨヴァノヴィッチ氏にこの内容を読み上げると、前大使は「とても威圧的だ」と答えた。

これに対してさらにトランプ氏はツイートで、「まったく威圧的でも何でもない」と反論した。

トランプ氏は記者団に、弾劾公聴会の一部をテレビ中継で見たと認め、「とんでもない醜態」だと批判した。

情報委員会の弾劾公聴会は、トランプ大統領と側近たちが、来年の大統領選で有力な対立候補になるかもしれないジョー・バイデン前副大統領(民主党)とその息子について、汚職疑惑捜査に着手するようウクライナ政府に働きかけ、その交換条件として軍事援助を停止したとされる問題をめぐるもの。前駐ウクライナ大使や現駐ウクライナ臨時代理大使、国務省のウクライナ政策専門家などが相次ぎ、証言している。トランプ氏が今年7月にウクライナ大統領に電話で捜査着手を働きかけた際のやりとりを聞いていた、国家安全保障会議(NSC)のウクライナ担当もすでに、ウクライナへの要請に懸念を抱いたと非公開の聴聞会で証言している。

トランプ氏は自分は何も悪いことはしていないと一貫して主張し、弾劾調査は民主党による嫌がらせだと反発している。

弾劾調査の発端となった7月25日の電話については、ホワイトハウスが通話記録の一部を公表している

「証人威迫」の批判

トランプ氏のツイートは、ソマリア内戦はヨヴァノヴィッチ氏の責任だと批判しているように読める。これについてヨヴァノヴィッチ氏は、「自分にそれほどの力があるとは思えない。ソマリアの首都モガディシュでも、それ以外の場所でも」と公聴会で証言中に述べた。

「私がこれまで赴任した各地では、むしろ私や同僚たちは明らかに、状況を改善してきたと思う。アメリカにとって。そして赴任先の任地にとって」と前大使は続けた。

前大使の証言はテレビで生中継されていた。

公聴会の進行役を務めたシフ委員長は、証言中の証人に対するトランプ氏のツイートは、証人威迫に相当する可能性があると認識を示した。

公聴会の休憩時間に、シフ委員長は記者団に対して、トランプ氏のツイートは証言中の前大使に圧力をかけるもので、ほかの証人に対する威圧でもあると批判した。

委員長はさらに、前大使は「なんの理由もなく解任され」、「名誉を汚され」た上に、今や「合衆国大統領からリアルタイムで証人威迫を受けている」と述べた。

ビル・クリントン元大統領の弾劾調査で特別検察官を務めたケン・スター氏は保守系フォックス・ニュースで、トランプ氏のツイートは「非常によろしくない判断ミス」だと話した。

一方で、与党・共和党の関係者は、証人威迫に当たらないと反論。委員として公聴会に出席したジム・ジョーダン下院議員は、「証人は証言中だ。シフ委員長がツイートを読まなかったら、何を言われたかも知らなかったはずだ」と主張した。

ウクライナの「協力」についてトランプ氏が電話で

この日の公聴会に先立ち、ヨヴァノヴィッチ前大使は非公開の聞き取りで下院に対して、トランプ氏個人の弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏が中心となって自分を中傷して回ったため、解任されるに至ったと主張していた。前大使は、ジュリアーニ氏はウクライナにバイデン親子への捜査を働きかけると同時に、自分の不評を吹聴していたと話していた。

15日の公聴会で前大使はさらに、マイク・ポンペオ長官率いる国務省が自分のようなキャリア外交官を守らず、アメリカのウクライナ外交を「ハイジャック」した「外国や汚職利権」に抵抗しなかったと批判した。

ヨヴァノヴィッチ氏の後任になったウイリアム・テイラー臨時代理大使も、非公開の聞き取り13日の公聴会で、政府職員ではないジュリアーニ氏が主導する「非正規」のウクライナ外交に懸念を示した。

テイラー大使はさらに、トランプ氏がバイデン親子への捜査について駐欧州連合(EU)大使に電話越しに尋ねるのを、自分の部下が耳にしたと証言している。

この部下は国務省のデイヴィッド・ホームズ氏。キャリア外交官のホームズ氏は15日、下院の非公開会合で証言し、テイラー大使が公聴会に話した通り、ゴードン・ソンドランドEU大使と電話で話すトランプ氏の声を聞いたと認めた。

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テイラー大使とホームズ氏によると、ホームズ氏はソンドランド大使と共に今年7月26日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)のレストランで会食。トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の翌日だった。

米CBSニュースが入手した非公開会合での証言記録によると、ホームズ氏は「ソンドランドはトランプに、ゼレンスキーは『あなたにべたぼれだ』と(電話で)伝えた」と発言した。

「すると、トランプ大統領が『じゃあ、捜査はするのか』と尋ねるのが聞こえた」とホームズ氏は続けている。

「ソンドランド大使はこれに、『やる』と答え、さらにゼレンスキー大統領は『あなたに言われたことなら何でもやる』と付け加えた」という。

ウクライナの首都のレストランで、ソンドランド大使が大統領に携帯電話で直接会話したというテイラー大使とホームズ氏の証言を受けて、通話内容がロシアなどの情報機関に盗聴された危険を指摘する声も上がっている。

一方でトランプ大統領は今月初め、ソンドランド大使について「その人のことはほとんど知らない」と記者団に答えている。

来週にはソンドランド大使も、公聴会で自ら証言する予定になっている。

(英語記事 Trump impeachment inquiry: Envoy 'intimidated' by tweets during testimony