2019年11月21日 12:24 公開

イギリス王室のヨーク公アンドリュー王子は21日、王室の公務から距離を置くと発表した。性的人身取引で起訴され勾留中に急死した米富豪ジェフリー・エプスティーン被告(66)との友好関係をめぐるスキャンダルが、王室にとって「大きな障害」になっているとしている。

王子はすでに、エリザベス女王に「当分の間」公務から離れる許可を求めたと説明。また、エプスティーン被告の被害者や、「何らかの終結」を求めている人たちに深く同情していると述べた。

この件をめぐっては、アンドリュー王子はBBCの単独インタビューに応じたが、その対応に大きな批判が集まっている。

王子とつながりのある大学や慈善団体、企業などは相次いで王子との距離を取りはじめている。

(編集部注・ Jeffrey Epstein被告の姓は、日本語メディアで「エプスタイン」と表記されることもありますが、BBCでは当人を知る関係者たちの発音に近い「エプスティーン」と表記しています)

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アンドリュー王子は、エリザベス女王の第三子。今回の「個人的な決定」は、女王およびチャールズ皇太子と協議の末のものだという。

自身のウェブサイトに掲載した声明でアンドリュー王子は、「ジェフリー・エプスティーンとの誤った判断に基づく関係についてはっきりと後悔し続けている」と説明した。

「彼の自死によって、特に被害者にとって多くの疑問が残った。被害を受けた人たち、何らかの終結を望んでいる人たちに深く同情している」

「今はただ、こうした人たちが人生を立て直せることを願うことしかできない」

その上で、「要請があれば、適切な法的機関の捜査に協力する用意がある」としている。

BBCのダニエラ・レルフ王室担当編集委員は、この声明はBBCの単独インタビューとは「まったく違う態度」を示しており、エプスティーン被告の被害者に同情を示すなど、「批判されている問題にすべて言及している」と指摘した。

また、公務を控えるという決断は「思い切った」ものだと述べた一方、「王室が、現在出回っている噂に対処するのは非常に難しくなっている」と話した。

2001年から2011年までイギリスの国際貿易担当特使を務めていたアンドリュー王子は2010年暮れ、ニューヨークのセントラルパークでエプスティーン被告といるところを撮影された。

当時の被告はすでに未成年を売春に勧誘・斡旋(あっせん)した罪で有罪を認めた後だったため、アンドリュー王子は当時も、被告との交際を批判された。

また、2015年にアメリカでエプスティーン被告に対する民事訴訟が起こされた際には、原告の1人ヴァージニア・ジュフリー(旧姓ロバーツ)さんが、17歳だった2001年に被告に強制され、王子と性行為を3回したと主張している。

王子はこれらの件についてBBCの取材に応じ、すでに性的犯罪で有罪となっていたエプスティーン被告の家に滞在したことは「過ち」だったと認めた。

一方で、被告との友人関係は後悔しておらず、「非常に良い成果もあった」と説明。また、ジュフリーさんについてはまったく覚えていないと述べたほか、ジュフリーさんと共に写っている写真が本物であるかにも疑問を呈した。

アンドリュー王子の公務とは

アンドリュー王子のウェブサイトによると、王子はエリザベス女王のために公務を行っており、経済成長や熟練職の雇用創出に注力している。

過去2カ月では、オーストラリアやアラブ首長国連邦(UAE)、タイなどを公式訪問している。

今回の発表を受け、王子は今後、こうした公務を控える予定。英紙サンによると、19日に予定されていた、洪水被害のあったヨークシャーへの訪問は中止された。

一方で、エリザベス女王の生誕式典や終戦記念式典といった王室全体の行事には今後も参加するという。

企業などが次々と撤退

スキャンダルを受け、アンドリュー王子とつながりのあった大学や慈善団体、企業などが次々と関係の解消を発表している。

王子がパトロンを務めるデジタル職業訓練支援事業「iDEA」に参画していた英通信大手BTは声明で、「我々が提携していたのは事業幹部であり、支援者であるヨーク公ではない」と説明。

同社の広報担当者は、「組織との関係を見直し、パトロンが変更された際には、引き続き提携できることを願っている」と述べた。

また、アンドリュー王子が運営する起業家向けイニシアチブ「 Pitch@Palace(ピッチ・アット・パレス)」からは、大手会計事務所KPMGやスタンダード・チャータード銀行が撤退した。

ピッチ・アット・パレスについては、オーストラリアの4つの大学が提携を取りやめるとしている。


<分析>ジョニー・ダイモンド王室担当編集委員

現代では前例のないことだ。アンドリュー王子の公的生活はしばらくの間終わりを告げる。声明では、公務からの撤退は「当分の間」とされている。しかし、王子が公務に戻ってくるきっかけがどんなものなのか、見極めることは難しい。

BBCとのインタビューはおおむね間違いだったとみられている。あれは大惨事だった。しかし当時は、いいアイデアに見えたのだろう。

BBCの調査報道番組「パノラマ」はヴァージニア・ジュフリーさんをめぐる疑惑を追及しており、間もなく放送される予定だ。ニューヨークでは、エプスティーン被告に関する文書公開を求めた裁判が進んでいる。アンドリュー王子への圧力はさらに増えるだろう。

英王室が問題に対処しきれていないという指摘もあるが、バッキンガム宮殿は、指示系統がしっかりしている企業や政府機関とは違う。何世紀もの間、王族の男性たちはわが道を進んできた。

アンドリュー王子をめぐる疑問は数多く残されている。金銭、称号、軍での所属、支援事業、改革はどれほど早く進むのか、そしてもちろん、王子がエプスティーン被告の捜査でなお何らかの役割を担うのか。

しかし現時点では、屈辱は終わった。公的生活の中に生まれたアンドリュー王子は、プライベートな生活への撤退を余儀なくされた。

そして、王室は揺れている。


(英語記事 Prince Andrew stepping back from royal duties