まず確認しておきたいが、これから始まるであろう首里城復元の事業主体は日本政府か、それとも沖縄県かご存じだろうか。首里城跡は国有財産であり、城のあった首里城公園を含む沖縄記念公園は国営で、内閣府沖縄総合事務局の管轄である。

 そもそも、復元には多大な予算が必要であり、沖縄県単独の財政力では不可能である。そうであるなら、当然日本政府が事業主体になると考えるのが常識だ。

 衛藤氏も、11月5日に「必要な財政支援を行うことも含め、国が責任を持って再建を進める」と改めて表明している。ところが10日後の15日、玉城氏が定例会見で「今後、所有権移転をどうするかということも議論していく必要があるだろうと思う」と突然言い出した。

 そして、玉城氏は「わったー(私たちの)首里城として、多くの皆さんの魂を込めていく中に、県がどのように取り組んでいくかが一番大事だ」と続けたのだ。21日になって、玉城氏が「今の段階で、私の頭には想定も何もない」と所有権移転について発言を後退させたとはいえ、この言葉にこそ、首里城復元を第二の辺野古へと導く非常に大きな危険性が潜んでいるのだ。

 首里城焼失以降、沖縄の二大紙は再建報道で埋め尽くされている。特に、琉球新報は連日の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関するニュースが紙面から消え去ってしまったと感じるほどだ。

 琉球新報はオピニオン連載「首里城再建・識者の見方」で、識者を次々と登場させた。ただ、この「識者」に注意を払う必要がある。

 琉球大の比屋根(ひやね)照夫名誉教授は「民衆の城取り戻す事業に」の中で、国から首里城を取り戻そうと主張する。だが、再建資金は国からもらいたいから「国は戦争の贖罪(しょくざい)意識を持って再建に参加すべき」と注文を付けた。
米軍普天間飛行場の移設先として、埋め立てが進む沖縄県名護市辺野古の沿岸部=2019年9月(小型無人機から)
米軍普天間飛行場の移設先として、埋め立てが進む沖縄県名護市辺野古の沿岸部=2019年9月(小型無人機から)
 要するに、首里城は大戦中に軍事要塞(ようさい)化して司令部を置いたために沖縄戦で燃えてしまった。だから琉球王国の城を焼失させた責任は国にある、という理論だ。

 琉球民族独立総合研究学会の親川(おやかわ)志奈子共同代表は「『日本の中の沖縄』を懸念」の中で、玉城知事が政府への支援要請の際に示した、祖国復帰50周年事業として再建を進めたいとの姿勢を批判している。所属からもうかがえるように、親川氏は自身を日本人ではなく琉球人だと思っている人物だ。祖国復帰記念事業によって復元すると、琉球が日本のナショナリズムに取り込まれてしまうから、県民や県人が主体となって琉球のアイデンティティーの象徴として首里城を取り戻すべきだというのだ。