連載では他にも、沖縄国際大の前泊博盛教授が「自己決定権」「自立経済」確立の観点で、琉球大の島袋純教授が国際連合の勧告を根拠として、それぞれ首里城の県への所有権移転を求めている。2人とも国有資産をいきなり県に譲り渡せというのだから、はなはだしく傲慢(ごうまん)な主張である。

 このように、沖縄のマスコミは「県民主体」という自主自立の精神をもって取り組むかのような聞こえの良い言葉を多用している。報道が繰り返されるうちに、それが当然のことのように聞こえてくるのを狙っているのであろう。

 こうして、政府にはカネを出させても、首里城を沖縄県に移管させて、復元事業の主体としてもらおうというわけだ。県と県内マスコミの目的が一致している以上、路線は決まったと認識して間違いないだろう。

 すなわち、政府と対立の構図を生み出すレールが敷かれてしまった。首里城が第二の辺野古問題と化し、日本政府を振り回す頭痛の種となる日はそう遠くない。

 沖縄県がワガママばかり振りかざすようになったら、「復元にもう1円の税金も使わないようにすればよいではないか」という声が聞こえてきそうである。常識で考えれば、「自分たちの城」というのなら、沖縄県外には寄付も求めず、県民や県人だけで復元すればよいではないか。通常ならそうあるべきだと筆者も思う。

 しかし、絶対突き放してはならない大きな理由がある。それは、沖縄県人を先住民族とする国連の存在だ。

 2008年以降、国連の自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会から、日本政府に対し「琉球・沖縄の人々を先住民族と認め、その権利を保護するべきだ」という勧告が5回も出されている。国連では、沖縄県人は日本人ではなく、日本に滅ぼされた琉球王国の末裔(まつえい)であり、現在は日本政府の差別的支配を受けている先住民族と認識されてしまった。
札幌市で講演する沖縄県の玉城デニー知事=2019年11月19日
札幌市で講演する沖縄県の玉城デニー知事=2019年11月19日
 気を付けなければならないのは、前述の琉球新報に掲載された識者もよく使う「沖縄の『自己決定権』回復」という言葉だ。辺野古移設阻止運動でも多用されてきたスローガンである。

 沖縄のマスコミは、自治権の拡大というイメージで報じているが、実際の意味は全く異なる。この「自己決定権」とは、国連専門用語の「self-determination」を日本語に置き換えた言葉であり、正しくは「民族自決権」と訳すべきだ。