その一方で、彼女はニューヨーク・タイムズなどに対しては、「最終的に州の取り方で勝てる候補を民主党が選ぶことの方が重要だ」とも述べている。先の大統領選では、全米でトランプ氏に300万票上回ったにもかかわらず、州の取り方で負けた経験を踏まえた発言だろう。あのときも3つの激戦州のトータル8万票差で、ヒラリー氏は負けている。

 現状を見てみると、11月4日に発表されたニューヨーク・タイムズの調査結果では、激戦州と考えられる6つの州のうち、4つでバイデン氏の支持率がトランプ氏の支持率を上回っている。だが、サンダース氏やウオーレン氏の場合、逆に4つの州でトランプ氏に引き離されている。

 とはいえ、いずれも2016年の3つの激戦州で、トランプ氏が直前までヒラリー氏に負けていた支持率差程度である。ゆえに、トランプ氏がバイデン氏を倒す可能性も十分ある。これを踏まえてトランプ陣営は、既に各州の住民の政治的ニーズを調査し、それをコンピューターで分析した精密な選挙戦略を立て始めている。

 確かにFOXの調査でも、トランプ氏の支持率は、例によって40%台で低迷していて、バイデン、サンダース、ウオーレン各氏の誰と戦っても負けが予想されている。だが、それは現段階での全国レベルでの数字である。先に述べた州の取り方の問題だけではない。バイデン氏は前述のように重度の「物忘れ」がある。サンダース氏も何度か心臓発作を起こしている。ウオーレン氏は医療改革などで具体的な財源を示していない。3人が有利な激戦州は、それぞれ違う。そう考えると6つの激戦州で勝てそうな状況になれば、ブルームバーグ氏にも、そしてヒラリー氏にも勝機がないとは言えない。

 前述したが、民主党の候補者選びが混乱している理由は、誰も予備選で過半数を取れなければ、党大会で特別代議員が投票する制度改革のおかげで、誰もが絶対的な支持を受けられなくても、数の勢いさえ見せつければ党大会で逆転できると考えているからだ。そのためか比較的無名の若い女性議員も何人か立候補している。その一人でヒラリー氏と親しかった女性議員に対して、ヒラリー氏が「あなたは民主党を分裂させてトランプを再選させようとしているロシアのスパイだ」と急に言い出し、物議を醸したことがある。

 このように、ヒラリー氏はトランプ氏との大統領選挙に敗れて以来、奇矯な言動が多く、それが日に日に悪化している。それだけではない。

 多くの有力者に少女の性接待を行うことで富豪になったと言われるエプスタインという人物が、性接待に関する容疑で連邦拘置所に拘置中、自殺する事件が8月に起きた。エプスタイン氏の顧客には、ヒラリー氏の夫であるビル・クリントン元大統領もいた疑惑があり、それをトランプ支持の有名芸能人がツイッターで指摘。これをトランプ氏がリツイートしたことがあったが、そのとき、ヒラリー氏は「あと数日でエプスタインは自殺する」と事前に言っていたというツイートなどが、米国中で何百万も飛び交ったという。
安倍晋三首相(右)との会談を前に握手するビル・クリントン元米大統領 =2015年3月、首相公邸(代表撮影)
安倍晋三首相(右)との会談を前に握手するビル・クリントン元米大統領 =2015年3月、首相公邸(代表撮影)
 また、ヒラリー氏の電子メール問題を追及し、もう少しで動かぬ証拠をつかみかけていたジャーナリストが、曖昧な内容の遺書を残して自殺したり、「これ以上、不正に手を貸すことは良心が許さない」と言っていた、ヒラリー氏の選挙対策本部(正確には民主党本部)のサーバー管理者が何者かに背後から射殺されたりしている。

 ロシア疑惑に関しても、若手のホープたちは解明に積極的で、ベテラン民主党議員が消極的という不思議な現象がある。ロシア疑惑でもウクライナ疑惑でも、ヒラリー氏関係のロビースト事務所などが莫大なマネーを動かしていた疑惑の方が重要で、それに民主党のベテラン議員も深く関係しており、それを隠蔽するためにトランプ氏に罪を被せようとしているとの見方がある。また、それを明らかにすることで、若手のホープたちは自らの支持率浮上を狙っているのかもしれない。

 一方、若手のホープではないが、オバマ前大統領が自ら本命の後継者と考えているとされるパトリック元マサチューセッツ州知事も、ブルームバーグ氏の次に出馬を表明。彼は黒人だが、金融ビジネスで成功しており、ユダヤ系で大富豪のブルームバーグ氏とは似た部分もある。