一色正春(元海上保安官)

 令和元年11月22日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了まであと数時間という時点で、韓国政府は突如として日韓GSOMIA破棄撤回の意向を示し「韓国はいつでもGSOMIAの効力を終了できるという前提で、8月23日の終了通知の効力を停止させることにした」(破棄撤回ではなく一時停止にすぎないという言い訳)と発表しました。これは国際法および国際儀礼を無視した無礼な物言いで、国内向けのパフォーマンスというより、相変わらず日本を蔑視する尊大な印象を受けます。

 そもそも韓国は、自分たちがGSOMIA破棄を宣言したのは、日本が輸出管理で優遇措置の対象となる「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外したからだと説明しています。しかし、「輸出手続きを優遇しているのだから日本から輸入した危険物の管理をきちんとしろ」と言っただけで「秘密を共有できない」という結論に達するのは、彼らが主張する「自称徴用工問題」の報復でホワイト国指定を解除するのは筋違いだというのと同じことです。「日本が政治問題を経済的に報復(これは韓国の勝手な解釈で事実とは異なる)するのは許さないが、自分たちが輸出入管理の問題を安全保障問題にリンクさせるのは構わない」という、自分勝手な二重基準としか言いようがありません。

 兎(と)にも角にも、単なる貿易手続きの問題にもかかわらず、今まで言いなりになってきた日本が、ちょっとでもやり返してきたのが気に入らないのと、米国の仲裁を当てにしていたのでしょうが、その目論見(もくろみ)は今のところ大外れで、彼らの自尊心は大きく傷ついたことでしょう。

 戦後の日韓関係においては、韓国が喚(わめ)けば、どんな無理難題でも日本が折れて、最終的には彼らの要求をのんできました。敗戦国であるという負い目や、誤った戦後教育で植え付けられた罪悪感から何となく、彼らの要求を受け入れてきた日本人も日韓ワールドカップで生の韓国を知り、日韓関係のあり方に疑問を持つようになりました。

 そして、インターネットを中心に学校で教えてくれなかった本当の歴史を知るにしたがい、だんだんとエスカレートする彼らの際限なき要求や言い掛かりに怒りを覚え、この歪(いびつ)な日韓関係に終止符を打ちたいと思う人が増え、昨年のホワイト国指定解除につながったのだと思います。

 わが国が韓国をホワイト国から除外したのは、あくまで単なる輸出入管理の問題なので、これほどまで大騒ぎするほどのことではないのですが、以前の日本政府であれば、その当たり前の措置すらできたかどうか疑わしいです。

 そもそも欧州連合(EU)ですらホワイト国に指定していない韓国をなぜ日本が指定したのか、そこにも韓国の言いなりになった日本政府の姿が想像できます。そんな韓国の言いなりであった日本が変わったのは安倍晋三という個人の資質もさることながら、国民世論が政府の後押しをしたことが大きく、それは現政権の対韓政策を国民の7割が支持するというアンケートの数字に表れています(韓国のホワイト国除外について、経産省が今年7月に実施したパブリックコメントの結果は総数4万666件のうち賛成が約95%、反対は約1%であった)。
G20大阪サミットで韓国の文在寅大統領(左)を出迎える安倍晋三首相=2019年6月28日、大阪府大阪市住之江区(代表撮影)
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G20大阪サミットで韓国の文在寅大統領(左)を出迎える安倍晋三首相=2019年6月28日、大阪府大阪市住之江区(代表撮影) 
 おそらく今回、歪な日韓関係を変えようと思っている人たちは日韓GSOMIAが破棄されることを歓迎し、それを機会に韓国とできるだけ距離をとりたいと願っていたのだと思いますが、良い意味でも悪い意味でも期待を裏切ってくれるのが大韓民国という国です。

 しかし、今回の結果を前向きにとらえれば、実質的には既に対馬海峡まで下りてきている38度線(防衛線)が名目的にもわが国の眼前まで迫り、韓国軍60万が完全に敵に回るまでの時間稼ぎと考えることもできますが、現在国会で行われていることを見ると、いくら時間を稼いでも無駄なような気がしてため息しか出ません。