2019年12月02日 12:51 公開

英ロンドン中心部のロンドン橋付近で5人が殺傷された事件について12月1日、死者の1人がサスキア・ジョーンズさん(23)だと判明した。11月30日には、もう1人の犠牲者がジャック・メリットさん(25)だと明らかになっている

2人は英ケンブリッジ大学出身で、この日は事件のあった建物で開かれていた、元受刑者の社会復帰を支援する同大学プログラム「Learning Together(共に学ぶ)」のイベントに参加していた。

11月29日午後の事件では、同じくイベントに参加していた仮釈放中のウスマン・カーン容疑者(28)が刃物で2人を殺害、3人にけがを負わせた。

国民保健サービス(NHS)によると、負傷した3人のうち1人は病院を退院。残りの2人の容体も安定しているとしている。

カーン容疑者はその場で警官に射殺された。調べによると、コートの下ににせの自爆チョッキをつけていた。

会場の責任者は、容疑者に反撃した集会所スタッフは、本物の爆弾だと思いつつ、椅子や消火器や壁にかかっていたイッカクの角などで反撃し、路上で取り押さえたと話した。

路上では駆け寄ってきた交通警察の警官が容疑者から刃物を取り上げたが、コートの下に自爆チョッキを着ているように見えたことから、駆け付けた武装警官が容疑者を射殺した。

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遺族は厳罰化を望まず

ストラトフォード・アポン・エイヴォン出身のジョーンズさんの家族は声明を発表し、ジョーンズさんは司法に不当な扱いを受ける人たちの支援に「大きな情熱」を注いでいたと話した。

「サスキアは楽しく、優しく、多くの人の人生に前向きな影響を与えていました。いたずらっこな一方、あらゆる人に良い面を見いだそうとする優しさを持っていました」

「知識欲が旺盛で、充実した人生を送ろうしていたところでした」


メリットさんの家族は、「才能ある息子」は「やりたいことをして亡くなった」と話した。

「ジャックは信念を持って生きていました。復讐ではなく救済と回復を信じ、いつも弱い人の見方をしていました。賢く、思慮深く、共感力の強い人でした」

一方で、「このひどい単発事件をきっかけに、政府が受刑者により厳しい刑を科したり、人を不要に長いこと刑務所に閉じ込めるようなことは、ジャックは望んでいないはずです」と強調した。


ケンブリッジ大のスティーヴン・J・トゥープ副学長は、「犠牲者に大学スタッフや卒業生がいると知り、衝撃を受けている」とコメント。ジョーンズさんとメリットさんは、同大学の犯罪学研究所による「Learning Togetherの5周年を祝うイベント」に参加していたと説明した。

また、けがをした3人のうち1人は同大学の職員だと明らかにした。

トゥープ教授はBBCの取材に対し、このイベントのコーディネーターをしていたメリットさんが、支援していた元受刑者に殺されたのは「最大の悲劇だ」と語った。

「社会に変革をもたらすこのユニークな取り組みの成果を祝うはずの、嬉しい機会が、本当にひどい犯罪行為によって妨害されてしまった」

「おぞましい、無意味なテロ行為を私たちの大学は非難する」

「今回の事件は私たちのコミュニティーへの攻撃で、恐怖と悲しみをもたらすために計画された。そlして、その通りになってしまった」


カーン容疑者は、2012年にテロ関連の罪状で有罪となったが、2018年12月に仮釈放された。それ以来、英中部スタフォードで、保護観察を受けながら暮らしていた。電子タグを常用し警察の監視下に置かれるほか、テロ関係者の社会復帰を目的とする政府のリハビリ・プログラムへの参加を義務付けられていた。

同容疑者は事例研究の参加者として、プログラムの報告書で紹介されていた。「ウスマン」の名前だけで登場するカーン容疑者は、仮釈放後に資金集めの夕食会でスピーチをしたと記されている。

事件を受け、量刑をめぐる議論が沸き起こっており、ボリス・ジョンソン英首相は「刑罰を厳しくする」と話している。

一方で、殺害されたメリットさんの父、デイヴィッド・メリットさんはすでに削除したツイートで、「この攻撃で殺された息子のジャックは、量刑の厳罰化や、人を不要に収監するための口実に、自分の死が利用されることなど望まないはずだ」と書いた。

デイヴィッドさんは1日にも、ジャックさんやサスキア・ジョーンズさんの写真を1面に掲げて「ジハード主義者への処罰教強化へ」と見出しにした英タブロイド紙に強く反発し、ツイッターで、「私の息子の死や、息子とその同僚の写真を使って、自分たちのおぞましいプロパガンダを促進するな。ジャックは憎悪や分断や無知といった、あなた方が象徴する全てのものに反対していた」と書いた。

集会参加者や建物職員を称賛

イベントが開催されていた鮮魚販売業界団体の集会所「Fishmongers' Hall」のトビー・ウィリアムソン会長は、カーン容疑者を取り押さえようとした集会参加者2人を称えた。

ルカシュとアンディーと呼ばれたこの2人は「消化器や椅子、壁にかかっていたイッカクの角」などを使って、建物内で攻撃を開始したカーン容疑者に向かっていたという。

「2人は『もうたくさんだ』という決断を下した。これ以上、この攻撃が続いてはいけないと判断した。普段はとても謙虚な人たちが(中略)いざと言うときには素晴らしいことをする」

カーン容疑者の攻撃は屋外のロンドン橋に出ても続いたが、職員らによって取り押さえられほか、助けに駆け寄った私服姿の交通警官が刃物を取り上げるなどした。


また、1日には現場近くのサザーク大聖堂で犠牲者の追悼礼拝が行われた。大聖堂は事件当日、ロンドン橋から逃げる人々が駆け込み、一時封鎖された。

アンドリュー・ナン首席司祭は、人々が駆け込んでくる様子に、2年前にロンドン橋とバラ・マーケットで8人が亡くなった襲撃事件の時のような「既視感を覚えた」と話した。

「記憶が呼び起こされ、傷がまた開いてしまった」

一方で、「人々の脳裏に追いやられていたものが、今は目の前に現れている」と話した。

「私たちは彼らの側にいなくてはならない。痛みに耐える手助けをし、希望の言葉をかけなくてはならない」


(英語記事 Second London Bridge victim named as Saskia Jones