平野和之(経済評論家)

 栃木県佐野市の東北自動車道佐野サービスエリア(SA)の運営を受託している「ケイセイ・フーズ」の労働組合が11月、2回目となるストライキを実施した。8月の1回目のスト後、筆者は2度ほど調査したが、なぜこうした事態にまで発展したのか判明せず、不明な点が多いままだ。

 では、全国の注目を集めた佐野SAのスト騒動とはいったい何なのか。今回は、筆者なりに想定し得るケイセイ・フーズの内情と、それに呼応した社会的背景、経営的リスクなどを整理し、企業側と労働者側の双方の視点から対策などを提起したい。

 最初のストは、8月の売店の品物が仕入れられていないことから始まり、経営危機疑惑を労働組合執行委員長が追及したところ、会社側の説明のないまま解雇処分になったとされている。

 ケイセイ・フーズは、今回の問題を巡って社長が代わり、経営権も譲渡されたようだ。佐野市内の建設会社の経営者が社長になっており、株については登記簿では確認できないが、譲渡された可能性が高い。

 筆者は弁護士ではないので法律的見解はここでは割愛するが、中小企業の経営アドバイザー、企業の合併・買収(M&A)などに従事してきたので、「中小企業経営あるある」に基づいて仮説を立ててみたい。

 そもそも、通常のSAで赤字になることはあまり考えられない。賃料は固定ではなく、売上歩合が基本であり、集客力は抜群である。かつてはファミリー企業が経営し、暴利をむさぼっていると批判を受けてきたSAだが、最近は「やれるものならやりたい」と、同業者はみな口をそろえる。

 特に、佐野SAは、東北自動車道の中でも3大「ドル箱」SAの一つ。ゆえに、ここの経営だけで経営危機が起こることはありえない。しかし、商品の仕入れがなくなる、減ったなどという事実から見れば、資金繰りに窮していることは、だれの目で見ても明らかだ。では、その原因は何か、である。

 中小企業経営でよくある話として、株や不動産投資の失敗がある。ただ、日本の中小企業経営者に概ね言えることだが、バブル崩壊後、こうしたケースは稀(まれ)だ。ありがちなのは、別の事業の経営苦境で、人件費高に加えて売上減少が重なり、SA事業では黒字なのに倒産危機に瀕するケースだ。一般的な中小企業の経営に関していえば、景気後退の中でインフレが起こる「スタグフレーション」状態で、アベノミクスの恩恵はほとんどない。

 ただ、本業が苦境でもドル箱のSAで稼いでしのごうとするのが通常であり、SAで仕入れができないほどであれば、表現は悪いが「脳死」状態の経営と考えるのが妥当である。
上り線のフードコートは営業されておらず、下り線に誘導する案内が貼られた佐野サービスエリア=2019年8月、栃木県佐野市
上り線のフードコートは営業されておらず、下り線に誘導する案内が貼られた佐野サービスエリア=2019年8月、栃木県佐野市
 もう一つ中小企業経営によくある話が、業績が好調のときに放漫経営を繰り返すといった私利私欲が先行し、会社経営が立ち行かなくなるケース。特にサービス産業は、労働集約型で根性論による経営で成功した場合、その後に社長の横暴などに歯止めが効かなくなる。筆者は、この両方が重なったとみる。

 一方で、佐野SAの場合、中小企業なのに労組があることには逆に驚いている。労組が強い大企業は、日本では簡単にリストラができない。賃上げ要求ばかり出て、会社が破たん寸前になって初めてリストラできるわけだが、JALやシャープ、東芝を見ても分かるように人員整理は困難を極める。往々にして、労組が強い会社は、従業員が多いとされ、なかなか人員整理はできない。