もちろん、労働者の権利を守ることは重要だが、日本の場合、解雇規定がないため、会社が苦しくなると労組が強い会社は苦境に立たされる。こうした背景を鑑みれば、佐野SAの場合、労組執行委員長の「クビ」が狙いだったわけではなく、労組の実質的解散が本丸だったのではと思えるふしもある。

 そもそも、日本の企業でストライキはほとんど見られない。公共交通機関でたまにニュースでストライキが報じられるが、ストライキは日本の場合、逆効果になることが多く、その意義を見直すべきだと思う。

 例えば、会社の経営が倒産寸前で、賃金が上がらないからといって「よーし、ストライキだ」と、やれば、ますます業績は悪化し、倒産へのカウントダウンを早めるだけだ。会社が倒産してしまえば、賃金の不満以前に失業してしまう。

 日本の風潮として、訴訟沙汰にするといった紛争を嫌う文化があり、最後の最後でストライキのような大暴れをしても、時すでに遅しとなる。結局、佐野SAも、今回のように午前7~8時のみのストライキでは、経営サイドは無視するだろう。メディアでのアナウンス効果は大きいが、会社のブランド力低下を強め、さらなる業績悪化をもたらすだけだ。

 そこで、今回の問題は、どうすれば、ベターな解決となっていたかを提案したい。

 まず、労働者サイドの視点では、委託元の東日本高速道路(NEXCO(ネクスコ)東日本)や子会社のネクセリア東日本などに相談を持ちかけることだ。一部報道によると、すでに労組がアクセスをしているようだが、そもそも、SAはインフラを活用したビジネスだけに、高度の公益性が求められる。ネクスコは事実上、国の機関といっても過言ではないため、こうした「弱み」を攻め立てれば効果はあるはずだ。

 一方、経営者サイドから見れば、本件は政治問題に持ち込める。あらかじめ断っておくが、筆者は佐野SA問題に関して経営者サイドを支援するつもりはない。ただ、仮に筆者がM&Aを手掛ける投資家なら、会社をいったん分割してリセットし、労組がないところから社員を採用してやり直す。とはいえ、リストラ費用は相当高額になることが予想され、ある程度現場を任せられる人材が採用できなければ、業績にも悪影響が出るといったリスクを伴う。
ケイセイ・フーズの従業員らに話をする労働組合執行委員長の加藤正樹氏(右端)=2019年11月、栃木県佐野市
ケイセイ・フーズの従業員らに話をする労働組合執行委員長の加藤正樹氏(右端)=2019年11月、栃木県佐野市
 やり方次第だが、新設会社に新規の投資家が株を持ち、今の経営権を掌握する方式で買収し、経営権利料を旧会社に支払うことでリストラ費用をねん出するスキームが組めれば、リスクは最小化でき、かつ投資額も最小になる。ケイセイ・フーズは新しい社員を使って運営を始めたとされているが、佐野市の建設会社社長に切り替わったのは、こうした条件だったのではと、想像はつく。

 しかも、ネクスコとの契約を新設会社に切り替えはできないが、分割会社ならできる。このあたりは想像だが、新設会社は労組がないか、または弱い。一方、業務面で必要な人材の部分のみを、旧会社に下請け的に運営を委託している方式ではないだろうか。