ク・ハラさんの死後、韓国の公営放送KBSは、彼女の関連記事に書き込まれたコメントの内容を分析している。韓国の大手ポータルサイト・ネイバーに書き込まれたク・ハラさんの私生活と関連した記事5件を選び、記事に書き込まれた1万3700件の書き込みをすべて分析したものである。分析の結果、全体の19%に当たる2600件が「悪質コメント」と見なされるものだった。

 韓国ではさらに、こうした根拠があやふやな書き込みをネタとして報道する慣習がある。もちろん元ネタに対する事実確認などはなされない。あくまで「ネットニュースにこうした書き込みがなされた」との「事実」を報道しているだけ、という言い訳が通るからだ。結果として、事実無根の「流言飛語」がニュースとして再生産され、拡散する悪循環を招く。もちろん、こうした悪質な書き込みや報道は刑事事件や裁判沙汰にもなっており、警察庁の統計によると、ネット上の名誉毀損(きそん)・侮辱に関する事件は2012年に5684件、14年に8880件、16年は1万4908件と急増している。

 KBSの調査によると、ク・ハラさんに関する悪質コメントには「顔」「整形」「手術」など、主に容貌を卑下する用語が用いられていた。中には「整形に失敗して自殺を試みたのではないのか」といったものもあったようだ。これは、昨年に彼女が受けた眼科手術をネタとしたものだ。彼女の自殺未遂をネタとした悪質コメントもあった。実は、ク・ハラさんは去る5月にも自殺を試みたことがあり(この際にはマネジャーが早くに発見したため、大事には至らなかった)、この事件の後、悪質コメントの内容はさらにエスカレートしていく。その中には「次は自殺に成功しろ」という人格を冒瀆(ぼうとく)する内容もあった。

 また、彼女が光州出身者であったことも、攻撃の対象になった。日本ではあまり知られていないが、韓国国内には、光州が位置する全羅道に対する根強い差別意識がある。

 例えば、韓国のネット上では全羅道出身者を「ホンオ(紅魚)」と呼ぶ。これは、発酵させたエイ(「紅魚」)を食べる全羅道地方の人々を罵(ののし)る地域差別用語である。もちろん、タブーとされる表現だが、いかなる差別や罵倒も許されるネット空間では使い放題。韓国のネット上で「ホンオ」を検索してみれば、韓国における全羅道差別がいかに酷いかが瞬時に理解できるだろう。ク・ハラさんもこうした差別感情の標的になった。書き込みの中には「全羅道出身者を排斥するのがグループの生きる道」といった心ない内容もあったようだ。

 こうした悪質な書き込みに対して、生前のク・ハラさんは「私の精神的健康のためにも、皆さんが美しい言葉、きれいな視線を持つ方々だったら、と思います」「悪質コメントに対する善処はありません」などというコメントを寄せてもいる。
韓国の女性グループ「KARA」の元メンバー、ク・ハラさん(聯合=共同)
韓国の女性グループ「KARA」の元メンバー、ク・ハラさん(聯合=共同)
 こうした悪質コメントはク・ハラさんの死後にも続いている。あきれたことに、彼女の死を自分の動画の視聴者数増加や、商売に利用しようとする輩(やから)も登場。ク・ハラさんの死後、韓国の大型掲示板サイトには「ソルリ、ク・ハラの次の打者は誰だ」とのタイトルの書き込みがなされたが、これはオンラインゲームの広告を目的としたもので、ネット上で耳目を集めるために2人の死が利用された(この書き込みはネットユーザーの非難を受けてすでに削除されている)。