2019年12月06日 12:13 公開

ドナルド・トランプ米大統領の弾劾調査を進める野党・民主党幹部ナンシー・ペロシ下院議長は5日、トランプ氏が職権を乱用したとして、下院で弾劾決議案を作成すると発表した。

ペロシ下院議長はこの日、記者会見で、「我々の民主主義が危機に直面している。大統領の行為によって、我々には行動を起こす以外に選択肢はない」と述べた。

「事実に争いはない。トランプ氏は自分の政治的利益のために職権を乱用し、我々の安全保障を犠牲にした。ウクライナ政府に、自分の政敵の捜査について公表する見返りとして、軍事援助の停止や、大統領執務室での重要な会談をちらつかせる方法で」と説明。

下院司法委員長に弾劾決議案の作成を指示したと明かした。

記者からトランプ氏を憎んでいるのか尋ねられると、ペロシ氏は自分はカトリック教徒であり、「誰も憎んでなどいない」、「私は今でも、常にトランプ氏のために祈っている。だからそんな言葉を使った言いがかりはやめて!」と述べた。

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民主党は、トランプ氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、軍事援助と引き換えに、政敵のジョー・バイデン前副大統領に関する捜査をするよう働きかけたとしている。

下院での弾劾決議案の採決が年内に行われ、弾劾が決議された場合、早ければ来年1月に上院で弾劾裁判が始まる。

民主党は「狂っている」

トランプ大統領は、民主党は「狂っている」と反発。ペロシ氏の発表直前には、「私を弾劾するつもりなら、今すぐやれ。そうすれば我々は上院で公正な裁判が行えるし、この国は本来の業務に戻ることができる」とツイートした。

ホワイトハウスのステファニー・グリシャム大統領報道官は、ペロシ氏の発表直後、民主党は「恥ずべきだ」としたうえで、「我々は上院での公正な裁判を楽しみにしている」と述べた。


米下院では4日、司法委員会の公聴会が開かれ、下院で多数派の野党・民主党が推薦する学者3人と、共和党推薦の学者1人が証言した。

3人がトランプ氏の行為は解任に値すると述べた。一方で、与党・共和党が推薦した学者は、トランプ氏の行為は間違っていたが、弾劾には相当しないとの見解を表明した。

下院はこの日の証言も参考に、弾劾訴追の決議案をまとめる。


弾劾手続きとは

合衆国憲法第2条第4節は、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と規定している。

弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院がそれぞれ持つ。

下院でこの弾劾決議案を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立に必要な3分の2以上の賛成票を得るには、多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

政府と共和党は、弾劾裁判は最長2週間とするよう求めている。

過去の大統領で弾劾されたのは、アンドリュー・ジョンソン第17代大統領とビル・クリントン第42代大統領のみだが、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump impeachment to go ahead - Pelosi