2019年12月10日 12:09 公開

12日に迫る英総選挙で国民保健サービス(NHS)に焦点が当たる中、ボリス・ジョンソン英首相がベッド不足で病院の床に寝かされている4歳男児の写真を見ることを拒否し、写真を見せようとした記者の電話を取り上げたことから、大きな批判を浴びている。

英イングランド北部リーズの総合病院に救急車で運ばれたジャックちゃんは、医師の診察を受けるまで4時間待たされていた間、ベッドが足りず、床に寝かされていた。

ジャックちゃんの写真は英紙ミラーに掲載されたもの。これを民放ITVの記者がスマートフォンでジョンソン首相に見せようとしたところ、首相は写真を見ようとせず、NHS対策の重要性を繰り返しながら、記者のスマートフォンを自分のポケットに入れた。

その後、ジョンソン首相は写真を見て、スマートフォンを記者に返している。一方、なぜすぐに写真を見なかったのかという質問には直接答えず、NHSへの補助金を増やすという保守党の公約を繰り返すとともに、「この病院を上から下まで再建する」と答えた。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、ジョンソン氏が「まったくどうでもいいと思っているんだ」と批判した新党「変化のための独立グループ(IGC)」のアナ・スーブリー党首は、首相の行動は「とんでもないことだ」と述べている。

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何があった?

ジョンソン首相はこの日、選挙活動の一環でイングランド東部グリムズビーを訪れていた。

取材中、ITVのジョー・パイク記者は数回にわたってジョンソン首相に写真を見るよう求めたが、首相はこれを拒否。最後には「差し支えなければ、これからインタビューを始めます」と言い、パイク記者のスマートフォンを自分のポケットにしまった。

ジョー・パイク記者はツイッターで、「首相にジャック・ウィルメント=バーちゃんの写真を見せようとした。肺炎の疑いのある4歳の男の子は、リーズの病院でコートの上に寝ざるをえなかった。首相は私の電話をつかんで自分のポケットに入れてしまった」と状況を説明している。

https://twitter.com/joepike/status/1204018593656180736


首相の行動に対し、パイク記者はさらに、「首相、あなたは写真を見るのを拒否し、私の電話をポケットに入れてしまった。この子の母親はNHSが危機にあると言っている。あなたの回答は?」と畳み掛けた。

ジョンソン氏は電話を取り出し、写真を見てから、「ひどい、ひどい写真だ。そしてもちろん、私はこの家族や、NHSでひどい経験をした全ての人に謝罪する」と述べた。

「しかし私たちは今まさにNHSを支援していて、全体としてはNHSの患者はこのかわいそうな子どもよりももっと、もっと良い経験をしているはずだ」

「それが私たちがNHSに多額の投資をしようとしている理由で、そのためには議会を進め、現在の膠着(こうちゃく)状態を解消し、前に進むしかない」

その後、首相はパイク記者に謝罪し、スマートフォンを返している。

「政治サッカーに利用しないで」

ミラー紙によると、ジャックちゃんは先週、6日間にわたって体調を崩し、リーズ総合小児病院へ運ばれた。

ジャックちゃんの母親によると、ジャックちゃんは病院に到着後すぐにベッドと酸素を供給された。しかし数時間後には別の患者に使うからとベッドを取り上げられ、さらに4時間以上、待たされた。

母親はコートでその場しのぎのベッドを作ってジャックちゃんを寝かせ、写真を撮ったという。

ミラー紙の取材でこの母親は、病院の医師や看護師は「素晴らしい人たち」だったと話した一方、「病院への補助金やベッドが少ないことに怒って」おり、政府が「子どもたちを見放した」と批判した。

また、ジャックちゃんの病院での様子を「政治サッカー」に利用しないでほしいと語った。

出版業界の規制団体「独立出版基準組織(IPSO)」に申し立てを行った母親は、2紙にジャックちゃんの写真を使うことを認めたものの、他のメディアでも広く取り上げられたことから、今後はこの写真やジャックちゃんの詳細について掲載することは控えてほしいと訴えた。


マット・ハンコック保健相はジャックちゃんの件について「ひどいことだ」と話し、「良いできごとではない、謝罪する」と述べた。

またリーズ総合小児病院を訪れ、ジャックちゃんの件について経営陣と協議した。

一方で、ジョンソン首相の写真に対する反応についてはコメントせず、「国民の懸念は、我々がこの病院やNHSをどのように改善できるかにある」と話すにとどまった。

野党からも批判

労働党のジョン・アッシュワース影の保健相は、ジョンソン氏の行動は「首相の品位をさらに貶めた」、「(子どものことなど)どうでもいいと思っているのは明らかだ」と批判した。

「このみっともない男にあと5年も与えて、NHSを破壊させるなど、あってはならない。ジャックちゃんのような病気の幼児はもっと良い治療を受けるに値する」

自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、ジョンソン氏が写真を見なかったのは「どうでもいいと思っているから、それに尽きる」と批判した。

「ジャックちゃんなど、どうでもいいと思っている。自分以外の人間はすべて、どうでもいいと思っている」

スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード議員は、ジョンソン氏は「共感力や道徳的指針のない人間だ」と話した。

(英語記事 Johnson criticised over reaction to sick boy image