2019年12月11日 12:56 公開

ルーシー・ロジャース、BBCニュース

2016年に行われた欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票以降、イギリスは地理や収入、教育、年齢などで分断されていると言われている。

しかし、EU残留派と離脱派の対立構造にもかかわらず、実際にはイギリス人の多くがさまざまな事柄で一致し、以前よりも自由主義的な社会観を共有している。

最新の世論調査から、イギリス人は実はどういう事柄で一致団結しているのかを紹介する。

1. パートナーに誠実


BBCニュースが調査会社コムレスに委託した世論調査によると、イギリス人の99%が「非常に」あるいは「いくらか」の度合いで、パートナーに対して誠実でいなくてはならない、そういう責任があると答えた。

男女別に見ると、女性の86%が相手に誠実である責任を「非常に」に感じると答えた。男性で同じ回答をしたのは79%だった。

また、男性の中では年齢が高いほど、パートナーへの責任を強く感じているという結果が出た。「非常に強く責任を感じる」と答えたのは55歳以上の男性では87%だったのに対し、16~24歳では66%だった。

女性では、55歳以上の81%、16~24歳の84%が、パートナーへの責任を非常に感じると答えた。

2. 同一労働に同一賃金の原則


毎年行われている「イギリスの社会的態度(BSA)」調査によると、ほぼ全ての国民が男女の賃金平等の原則を支持している。

この調査では89%の人が、同じ職場で同じ業務を行っている場合、男女で賃金に差があることは「非常に」あるいは「いくらか」間違っていると答えた

内訳を見ると、大学を卒業した人では92%が賃金は平等であるべきだと答えている。大学卒業資格がない人でも、78%が賃金格差を間違っていると話した。

ただ、「非常に間違っている」と答えた人は女性では78%。男性では57%と、性別によって違いが出ている。

3. 家事も育児も女性だけのものではない


BSAによると、女性が「家庭を守り」、男性が「稼ぐ」という考え方を否定したイギリス人は、全体の4分の3に上った

回答者は、女性の役割は家庭以外にもあるという意見だけでなく、何かの仕事が性別限定的だという認識もなかった。

また、イギリス人の多くは、医師や地方議会議員、下院議員などを含むさまざまな職業で、男性と女性に同じだけ適性があると考えている。調査では、男女共に「適性がある」職業について、回答者の半数が「全ての職業」あるいは「ほぼ全ての職業」だと答え、3分の1が「大半の職業」と答えた。

育児休暇についての質問では、2012年と2019年の調査で大きな差が出た。イギリスでは、子どもが生まれたり養子を迎えた場合に50週の育児休暇が与えられ、パートナーとの間で自由に分ける制度がある。

「母親が育休の全てを使うべきだ」と答えた人は2012年には16%だったが、2019年には12%に減った。

「母親が大半を、父親が少しだけ使うべきだ」と答えた人は、2012年の43%から2019年には40%に下がった。

これに対し、「父親と母親で半分ずつにすべきだ」という回答した人は2019年には34%に上り、7年前の22%から大きく伸びた。

BSA調査を実施する国立社会研究センターのナンシー・ケリー副所長は、女性の役割や権利、男女の関係についてイギリス人の捉え方がいかに変わったか、ここ数十年のこの調査結果から見て取れると説明。「特に印象的な」変化のひとつだと話す。

また、政治的にはブレグジット(イギリスのEU離脱)で分断されているように見えるイギリスだが、さまざまな社会問題については「とても、とても団結している」と分析した。

「社会的には、イギリス人はどんどん自由主義的になっていることが分かる。これは、政治的な分断と『文化戦争』と呼ばれるものが並行しているアメリカとは、大きく違う点だ。我々のデータからは、そのような現象は見られない」

その上でケリー氏は、こうした傾向は長期的に続いており、今後も続くと期待されていると話した。

4. 同性愛関係は「まったく間違っていない」


BSAの調査では、成人の同性愛関係について「まったく問題がない」と答えた人は全体の3分の2に上り、1983年に初めてこの質問が作られた時の解答から50%増えた。

同性愛関係を認める意見は、エイズ危機が起きて政府が「Don't die of ignorance(無知で死ぬな)」と呼びかけるエイズ阻止キャンペーンを行なった1980年代に、いったん下がった。しかしその後、1990年代に入ってからは堅調に、同性愛を受容する傾向は拡大している。

BSAの調査チームによると、この増加傾向は世代の変化によるものだけではない。高齢層や特定の宗教を信じていない人も、より自由主義的な考え方をするようになっているという。

一方で、様々な性的関係を受け入れる自由な態度の拡大は徐々に失速しているという結果も出ている。成人の同性愛関係について「まったく問題がない」と答えた人の割合は、過去3年でほとんど変わっていない(64%、68%、66%)。

調査チームは、同性愛を快く思わない人たちが少数ながら一定数いるとみており、「もしかしたら宗教を持つ人と持たない人の分断を表しているかもしれない」と話した。

5. 人工妊娠中絶の権利を支援


女性の健康が危険にさらされている場合には人工妊娠中絶を支持すると答えた人は、2016年の調査で92%だった。

また、女性が子どもを望まない場合にも中絶を支持すると答えた人は、2005年の60%から69%に増えている。

6. 科学と科学者を信じている


BSAの調査では、85%の回答者が、大学に所属する科学者が「公共の利益のために働いている」と信頼していると答えた。企業に勤める科学者にも67%の支持が集まった。

さらに医療分野では、向こう数十年の「生活の質を向上させてくれている」と答えた人が94%に上った。

一方、科学者が「研究の出資者についてオープンかつ誠実」だと信頼しているかという質問では、大学所属の科学者については67%、企業勤めの科学者では58%が「とても信頼している」あるいは「やや信頼している」と答えている。

特に、大学卒業資格のある人や、経営者、専門職についている人は大学所属の科学者への信頼が厚く、90%が信頼を寄せていると答えた。

大学卒業資格がない人では、73%が科学者を信頼すると答えた。

「専門家」への信頼が薄れているといわれる中、BSAの調査チームは、「権利を奪われた人々が科学に背を向けている」証拠はほとんどなかったと話している。

7. 国民保健サービス(NHS)への信頼


シンクタンクのキングス・ファンドが調査会社イプソスモリに委託した調査では、回答者の77%がイギリス社会でNHSは重要な役割を持っていると述べた。

NHSへの信頼は、政権や経済の変化を受けてもほぼ一定に保たれているという。

また、NHSの3つの原則である「無償提供」、「誰もが包括的なサービスを受けられること」、「主に税金による運営」を支持する人は90%に上った。さらに驚くべきは、回答者の3分の2が、NHSを継続させるための増税に賛成したことだ。

一方、BSA調査では、NHSのサービスへの満足度は下がり続けている。2018年の調査での満足度は53%と、前年から3ポイント下がり、2007年以降で最低を記録した。

8. 王室への信頼は重要


BSA調査によると、イギリス人の10人に7人が、王室を維持することが「非常に重要」あるいは「とても重要」だと答えた。

王室への支持は1980年代から1990年代にかけて下がっていた。1983年には83%あった支持率は、1994年には66%にまで落ち込んだ。これはチャールズ皇太子がダイアナ妃と離婚した頃だ。

1997年のダイアナ妃の死後、支持率は2003年に最低を記録した後、徐々に回復している。エリザベス女王の在位60周年記念だった2012年には76%に達した。

ここ数年、王室では大きなイベントが相次いだ。2011年にはウィリアム王子とキャサリン妃が、2018年にはハリー王子とメガン妃が結婚し、出産ラッシュを迎えた。

9. 気候変動の一部は人間活動が原因


2018年の欧州社会調査によると、イギリス人の95%が、気候変動の少なくとも一部は人間活動が原因だと考えている。

気候変動の原因が「すべて」あるいは「主に」人間活動にあると答えた人は全体の36%に上り、「人間と自然に同じだけ原因がある」とした人は53%だった。

一方、気候変動は「まったく起こっていない」と思っている人はわずか2%にとどまった。

10. サー・デイヴィッド・アッテンボロー、医療慈善団体、ハインツケチャップ、レゴ、グーグルマップ……イギリス人の愛するもの


社会的視点ではなく好きなものや人に絞った場合、有名人や慈善団体、食べ物に支持が集まった。

調査会社YouGovが行った調査「イギリス人が愛する100のもの」では、自然界のドキュメンタリーで世界的に有名なサー・デイヴィッド・アッテンボローが87%でトップに立った。

これに、心臓疾患の支援団体「British Heart Foundation」や応急措置を行う民間奉仕団体「セント・ジョン救急隊」、がん患者の支援団体「Macmillan Cancer Support」などが続いた。

有名人では7位に俳優のトム・ハンクス氏、9位に科学者のマリー・キュリー、14位に映画監督のスティーヴン・スピルバーグ氏が入っている。

また、食品では8位にハインツ、12位にチョコレートのマルティーザーズ、16位にマクヴィティのミルクチョコクッキー、19位にキットカットが入った。

IT系では、11位にグーグルマップ、17位にグーグル、20位にアマゾンが入り、企業では13位にソニーが入った。

レゴは10位だった。

全体では、100種類のうち19種類が慈善団体だったほか、4分の1が俳優などの有名人、4分の1が食品だった。

追伸:EU離脱派と残留派は、それほど分断されていない

バース大学心理学科のポール・ハネル博士によると、イギリス人はEU離脱派か残留派かに関わらず、多くの問題について共通の意見を持っているという。

ハネル博士の調査では、貧困や気候変動、住宅問題、イギリス人のアイデンティティー、生活満足度、地域社会に関わる重要性といった点で、離脱派と残留派の意見は90%一致している。

移民やアイデンティティーといった、最も分断につながりやすいとされるトピックでさえ、両者は50%以上の一致度を見せたという。

ハネル博士は、「相違点」にフォーカスすることで離脱派と残留派の差異が過大評価されていると指摘。共通点が数多くあるという証拠が、ブレグジットによって生まれた傷をいやしてくれるのではないかと話した。

「誰かと話すとき、思った以上に共通点がある方が話しやすいのだから」

記事デザイン:マーク・ブライソン、ジョイ・ロクサス、サナ・ジャセミ

(英語記事 10 reasons why we're not a divided nation